将来に備えて「貯める」だけでなく「増やす」資産形成の重要性が認識されるようになり、投資は以前に比べて身近なものになってきました。そんな投資の世界で今、注目されているのが、グローバルで約7150億ドルの市場が形成されている「インパクト投資」です。社会・環境課題の解決を目指す新しい投資の考え方を、日本におけるインパクト投資の普及に携わる社会変革推進財団常務理事の工藤七子さんが解説します。

(1)社会を変える「インパクト投資」 ESG投資との違いは
(2)インパクト投資が日本で「想定外の広がり方」をした理由
(3)好きなブランド推して学んで資産形成も!応援投資の世界 ←今回はココ

思い切ったチャレンジを後押しする「応援投資」が必要

編集部(以下、略) 日本におけるインパクト投資は想定外の経緯をたどって受容されていったというお話が前回ありましたが、市場規模や認知度など、順調に広がっていると見ていますか?

工藤七子さん(以下、工藤) はい。私たち社会変革推進財団が調査を始めた当初の予想よりもだいぶ速く進展しているなと思います。一方でこれも前回お伝えしましたが、投資の市場をリードしてきたのが大手金融機関なので、大きなイノベーションとか、常識を打ち破るようなとんでもない変革が出てくるかというと、なかなか出にくいと思うんですね。というのも、大手金融機関はリスクを回避するために、成熟し、安定したところにお金を投じるという責務を担っていますから。それはプレーヤーの役割分担としてそうなっているということです。

 これからはより思い切ったチャレンジとか、今までになかった商品やサービスを生み出すような動き、ある種リスクも高いし時間もかかるかもしれないところに、どうやって社会全体として応援する仕組みをつくっていけるかが重要です。ここはまさに個人投資家の出番で、「応援投資」のようなやり方がより必要になってくるだろうと思います。これは富裕層による投資に限った話ではありません。

―― 私たち一般の個人がインパクト投資に参画する方法としては、投資信託を買うという形になるのでしょうか?

工藤 そうですね。メジャーな証券会社のサイトで「インパクト」で検索すると、インパクトをテーマにしたファンドがいくつか出てくると思います。

 ただ、インパクトのファンドの組み入れ銘柄のポートフォリオを見に行くと、誰もが知っている大企業が並んでいて、「どんなインパクトになるんだろう?」と、なかなかイメージがつきにくいかもしれません。

 それに対して、小さな投資会社ではユニークなファンドを運用しているところもあります。投資先を見ると、聞いたことがないような中堅企業なども結構入っていて、「へえ、こんな面白い企業が日本にあるんだな」といった発見があったりするんです。こうした出合いが、上場株を投資対象とするインパクトファンドの大事なところだと思っています。

私たちがインパクト志向の投資に参画できる身近な方法について、2ページ目以降で詳しく紹介します
私たちがインパクト志向の投資に参画できる身近な方法について、2ページ目以降で詳しく紹介します