将来に備えて「貯める」だけでなく「増やす」資産形成の重要性が認識されるようになり、投資は以前に比べて身近なものになってきました。そんな投資の世界で今、注目されているのが、グローバルで約7150億ドルの市場が形成されている「インパクト投資」です。社会・環境課題の解決を目指す新しい投資の考え方を、日本におけるインパクト投資の普及に携わる社会変革推進財団常務理事の工藤七子さんが解説します。

(1) 社会を変える「インパクト投資」 ESG投資との違いは
(2) インパクト投資が日本で「想定外の広がり方」をした理由 ←今回はココ
(3) 大手のファンドだけじゃない 身近な「応援投資」の世界

効果測定が難しいインパクト投資 「見せかけ」の懸念も

編集部(以下、略) インパクト投資をするに当たって、その企業が行っているビジネスが社会や環境に対してどれほどポジティブなインパクトを起こせるかどうかを、投資家はどのように評価・判断するのでしょうか。売り上げのように実績を数値で簡単に表せるものではないですよね。

工藤七子さん(以下、工藤) はい。インパクト投資において重要なのが、社会や環境に与えた変化や効果を可視化する「インパクト測定」と、より多くのインパクトを創出するよう投資先に促す「インパクトマネジメント」です。インパクト測定については、金融業界においてデファクトスタンダード(事実上の標準)ができるところまではまだ行っていません。グローバルに見ても、各投資家がいろいろな指標やフレームワークを取り入れ、試行錯誤しながら測定しているのが現状です。

 例えば、医療・ヘルスケア事業を行う企業と、気候変動に関する事業を行う企業では、どちらも純利益はぱっと計算できますが、社会的・環境的なインパクトについては同じ指標を使って測定することはできません。そこがなかなか難しいところです。

 また、評価を数値などで明確にするのが難しいがゆえに、「インパクトウォッシュ」の懸念も大きくなっています。

―― インパクトウォッシュとは?

工藤 見せかけのインパクトとのことです。これだけインパクト投資が広がる中で、例えば投資信託のテーマとして「インパクト」と掲げたほうが注目されて資金が集められる、みたいになってしまう恐れがあるんです。きちんとインパクト測定・マネジメントを行った上で投資先を選定しているのか、それとも単に看板を「インパクト」に掛け替えただけなのか。そういうものを見極められないと、インパクト投資の数字は伸びているけれども、本当に解決されるべき社会・環境課題が見過ごされている可能性も出てきます。

 私が常務理事を務める社会変革推進財団(SIIF)では、国内の金融機関にインパクトの測定をしっかりやりましょうという働きかけを行ってきました。2021年には21の金融機関が集まって「インパクト志向金融宣言」を発足。22年11月1日時点で、署名機関は42まで増えています。

 同時に、これからは投資する側だけでなく、投資される企業側のリテラシーやノウハウも高めていく必要があります。

本当に解決されるべき社会・環境課題を見過ごさないためにも、インパクト測定を行うことが重要(写真はイメージ)
本当に解決されるべき社会・環境課題を見過ごさないためにも、インパクト測定を行うことが重要(写真はイメージ)