将来に備えて「貯める」だけでなく「増やす」資産形成の重要性が認識されるようになり、投資は以前に比べて身近なものになってきました。そんな投資の世界で今、注目されているのが、グローバルで約7150億ドルの市場が形成されている「インパクト投資」です。社会・環境課題の解決を目指す新しい投資の考え方を、日本におけるインパクト投資の普及に携わる社会変革推進財団常務理事の工藤七子さんが解説します。

(1) 社会を変える「インパクト投資」 ESG投資との違いは ←今回はココ
(2) 日本でインパクト投資が「想定外の広がり方」をした理由
(3) 大手のファンドだけじゃない 身近な「応援投資」の世界

途上国支援の現場における問題意識が始まりだった

編集部(以下、略) まずは基本のキからの質問になるのですが、インパクト投資とはどのようなものでしょうか。これまでの投資とは何が大きく違うのでしょう?

工藤七子さん(以下、工藤) インパクト投資を推進するグローバルなネットワーク組織、The Global Steering Group for Impact Investmentの日本支部であるGSG国内諮問委員会は、インパクト投資について、「財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動を指す」と定義しています。ちょっと堅苦しいですね(笑)。

 ざっくり説明すると、これまで「投資イコールお金もうけ」が一般的な常識だったところを、お金もうけだけではなく、その投資によって、社会・環境課題がどれだけ解決するのかということをきちんと目的にして投資するところがポイントになると思います。

―― 単により大きな利益を生み出すことを追求するのではなく、お金の「使われ方」も考えて投資をするということですね。そもそもいつごろから始まった投資の考え方なのでしょうか?

工藤 インパクト投資という言葉自体は、米国のロックフェラー財団が2007年にイタリアで開催した会合で初めて提唱したといわれています。ただそれ以前から、インパクト投資と同じような動きはあちこちで出始めていて、その動きを「インパクト投資」という言葉でくくったという形です。

 実はもともとの成り立ちとしては、途上国支援をしている人たちの間で広がった考え方でした。NPOやNGOの活動だけではない、持続的なビジネスをつくっていくことが、途上国の貧困問題や社会課題に対しての解決策になるのではないか。そして、ビジネスとして成長していくためには、補助金や助成金などではなく、投資の形でお金を入れていく必要がある。そうした問題意識が少しずつ広がり、ロックフェラー財団が全面支援をする形で、インパクト投資の象徴ともいわれる「アキュメンファンド」が立ち上がりました。

 どちらかというと、投資の世界ではなく開発援助の周りで少しずつ話題になっていたことが、08年のリーマン・ショックで、一気に金融業界にも広がりました。