世の中の食いしん坊たちから熱烈な支持を集めるarikoさん。簡単だけど、凝って見える。斬新な組み合わせで、いつもの味に変化が起こる−−。そんなarikoさんのレシピとアイデアからの今の気分にぴったりな“おいしいおすそわけ”をお届けします。今回は、クリスマスディナーの前菜からデザートまで、arikoさん家の「定番」を紹介してくれました。

亡き母の絶品ローストチキン

 12月に入ると街は一気にクリスマスの準備が始まる。華やかなオーナメントをあしらったツリーにイルミネーション、いくつになってもクリスマスの時期はワクワクするものだ。

arikoさん家のクリスマスデコレーション
arikoさん家のクリスマスデコレーション

 クリスマスの思い出といえばやっぱりローストチキン。大学をアメリカで過ごした祖父母のレシピで母が作るもので、中にはマッシュしたサツマイモと食パンの柔らかな部分を混ぜたものにレーズンが入ったほんのり甘いスタッフィングが詰められていた。

 表面はパリッと香ばしく、身はしっとりジューシーに焼き上げられた母のローストチキンは今思い返しても絶品だったが、実はこのスタッフィングが苦手だった。なんだかムチャっと柔らかくてぼんやりと甘いポテトとパンにまたまた苦手なレーズンまで入っていて、しょっぱいチキンとの組み合わせを受け入れることができず、かなり大きくなるまで、スタッフィングを口に押し込んで息を止めて飲み込んでいた。

 不思議なもので、今はパンプディングも大好きだし、甘じょっぱい味は大好物。母が亡くなった今はあのほの甘いスタッフィングが食べたくて仕方がない。舌の記憶がいつの間にか味覚のトレーニングになっていたのかもしれない。