ニュース番組などで日々目にする天気予報は身近な存在ですが、大規模な自然災害や急な天気の変化が頻繁に起こるようになった今、単に「あしたの天気」を知るだけではなく、気象への関心や知識をもう一歩深めることが重要になっています。気象が私たちの仕事や生活にどのように関わり、どんな情報をどんなリスクへの備えに役立てることができるのか。気象予報士の佐々木恭子さんが解説します。

(1)ビッグデータと併用で進化 気象情報は企業の利益に直結
(2)東京に近づく台風の数は20年間に5割増 命を守るには
(3)空や雲が教えてくれる天気予報 知れば楽しく危機管理も ←今回はココ

 前回は、気象災害から身を守るためのさまざまな気象情報や防災情報の使い方を紹介しました。ただ、日ごろから防災意識を高く保ち、情報にアンテナを張ることが大切とは言っても、実際のところ常に気を張っていることなんてできないですよね。

 気象災害に遭遇する可能性は誰にでもありますから、防災は当たり前のように続けていかなければなりません。だからこそ、「楽しい」「面白い」と思って続けている行動が、いつの間にか防災につながっているというのが理想的ではないでしょうか。

 いいきっかけになるのが、雲や空を楽しむことです。天気や気象は災害をもたらすような恐ろしいことばかりではなく、美しい光景や、不思議な現象を私たちにたくさん見せてくれます。そんなすてきな空に出合わせてくれるのが、雲研究者・荒木健太郎さんの著書『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』です。空のガイドブックとしてこの本を携え、前回紹介したさまざまな気象情報を使って、美しい空に出合いに行ってもらえたらと思います。

 これから紹介する写真はすべて、上記の本から引用したものです。

虹は「たまたま見られるもの」ではない?

 皆さんは虹を見ると、「ラッキー!」って思いませんか? でも実は虹って、偶然ではなく、狙って見られるのです。

 虹は、雨粒に当たった太陽の光が、水滴の中で屈折・反射されることで見られる虹色の光です。そのため、雨上がりにすぐ日が差してきたとき、太陽を背にして雨が降っているほうの空を見ると、虹が見られることがあります。つまり、雨雲がどんなふうに通過していくのかが分かれば、虹は狙って見ることができるのです。

 温帯低気圧の雨雲で、長時間しとしとと雨が降っているようなときは難しいですが、例えば太平洋側の夏に多い、積乱雲により局地的に雨が降っているところがある一方で、同時に晴れ間もあるという、いわゆる「天気雨」のときは虹に出合うチャンスです。そこで活用するのが、前回紹介した気象庁の「雨雲の動き」です。

 10分後には雨雲が通り過ぎるから、雨が上がったタイミングで外に出て、太陽と反対側の空を見てみよう……すると、まるで魔法のように「ほら見えた!」と、高い確率で虹を見られるのです。一度狙って見られると、とても楽しいですよ。

 そんなふうに、空を楽しむために「雨雲の動き」を開くようになれば、いつの間にか気象情報を当たり前のように使えるようになるわけです。

 「ハロ」も、美しい現象の1つです。次のページで詳しく紹介します。

雨雲の動きをチェックすれば、雨上がりに高い確率で虹を見ることができる
雨雲の動きをチェックすれば、雨上がりに高い確率で虹を見ることができる