ニュース番組などで日々目にする天気予報は身近な存在ですが、大規模な自然災害や急な天気の変化が頻繁に起こるようになった今、単に「あしたの天気」を知るだけではなく、気象への関心や知識をもう一歩深めることが重要になっています。気象が私たちの仕事や生活にどのように関わり、どんな情報をどんなリスクへの備えに役立てることができるのか。気象予報士の佐々木恭子さんが解説します。

(1)ビッグデータと併用で進化 気象情報は企業の利益に直結 ←今回はココ
(2)東京に近づく台風の数は20年間に5割増 命を守るには
(3)空や雲が教えてくれる天気予報 知れば楽しく危機管理も

企業向けの予報業務も気象予報士の主要な仕事

 はじめまして。気象予報士の佐々木恭子です。気象予報士というと、テレビ番組などで気象情報を伝える人というイメージがあるかもしれませんが、私は主に企業や自治体を対象に天気予報を提供する業務を行っています。

 この連載では、ビジネスにおける気象の役割や、災害から身を守るための「天気予報+α」の情報の使い方をお伝えすると共に、空や雲の変化に注目し、楽しみながら気象を身近に感じることができる「観天望気」についても紹介していきます。

 初めに少し自己紹介をしますと、私はもともと大学を卒業してテレビ番組の制作会社で働いていました。主にバラエティー番組に関わり、番組制作のアシスタントディレクターから始まってディレクターも務めましたが、9年ほど働いた頃、何か新しいことをやってみたくなって挑戦することにしたのが気象予報士試験です。

 当時、気象予報士は資格試験の花形で、受験者数もピークでした。それに加え、雪が好きなことや、日中なのに雷雨で真っ暗になることにワクワクしていた子どもの頃を思い出し、「ひょっとしたら私は気象予報士に向いているのでは?」という、多少思い込みの部分はありましたが、思い切って気象の勉強を始めてみたわけです。

 文系出身なので、最初は物理の勉強で鼻血が出そうになりました。でも、しつこく勉強しているうちに「あれ? 物理ってすごく身近なところにあるものじゃないか!」と気づき、そこから急に気象の勉強が楽しくなりました。いったん分かり始めると、世の中が「天気だらけ」になるんです。湯気が立ち上るのは空に雲ができるのと同じ原理なので、お風呂に入っても天気、コーヒーを飲んでも天気。そうして気象の面白さに目覚め、2007年に2回目の挑戦で合格しました。

気象情報は多様な経済活動に影響を与えている

 気象情報は経済活動や社会活動において、さまざまな意思決定や業務プロセスに大きな影響を与えます。情報を利用している企業や団体も、農業、水産業、製造業、建設業、運輸・通信業、道路事業、地方自治体など多岐にわたります。

 気象庁から発表される天気予報には、さまざまな種類があります。あす・あさっての天気予報(短期予報)や週間予報は普段多くの人が目にしているものです。そのほかに「2週間気温予報」「早期天候情報」「1か月予報」「3か月予報」「暖候期・寒候期予報」といった長期的な天候に関する予報や、短期予報よりも短い「今後の雨」「雨雲の動き」などがあります。これらは、気象庁のホームページで誰でも無料で見ることができる情報です。

「2週間気温予報」の一例(気象庁のホームページより)
「2週間気温予報」の一例(気象庁のホームページより)