VUCAの時代にこそ、新しいリーダーシップが必要になります。リーダーシップの研究に長年取り組む立教大学教授の石川 淳さんが説く最終回。不確実な時代に、一人ひとりがリーダーシップを発揮する強い職場をどのようにつくっていけばよいのか。上司が部下のリーダーシップを育成してこそ、シェアド・リーダーシップが実現します。

(1)「カリスマ上司がロールモデル」の時代は終わった
(2)VUCA時代に生き残る「誰もがリーダー」になる組織
(3)組織活性のカギ・部下のリーダーシップを育てる3つの柱 ←今回はココ

―― 第1回、第2回ではリーダーシップの定義が時代と共に変遷し、シェアド・リーダーシップが組織の生き残りのカギになることを知りました。今回はいよいよ、シェアド・リーダーシップをどのように促進し、組織に浸透させるのかを教えてください。

石川 淳さん(以下、敬称略) それに対する大きな回答は、2つあります。

 1つは、第1回で説明したHumble Leadership(謙虚なリーダーシップ)を実践すること。もう1つは、部下のリーダーシップを育成することです。

 謙虚なリーダーシップを実践すると、特に次の2つの効果があることが研究から分かっています。

 まず「ダイバーシティが組織にあったほうがいいよね、面白いよね」という意識、diversity climate(多様性のある風土)を受け入れる意識がメンバーに芽生え、そうした風土が育ちます。

 さらに、組織のメンバーが信頼(リーダーへの信頼、メンバーへの信頼)の意識を持つようになります。「私はこの組織に身を預けても、大丈夫だ」と思えるような感覚が高まるのです。多様性のある風土と、信頼の意識。これらがシェアド・リーダーシップを促進するのです。

 一方、部下のリーダーシップは放っておいても育つものではなく、管理職なりマネジャーが育成する必要があります

 どのように育成すればよいのか、次ページから3つのポイントで考えていきます。