未知の感染症、先の見通せない経済環境、国際情勢……。「VUCAの時代こそ、新しいリーダーシップが必要」と説くのが、立教大学経営学部の石川 淳教授です。上の世代のリーダーシップが通用しない時代、組織が強くなり生き残るために、リーダーシップの概念は既に大きく変わり始めています。新しいリーダーシップをいかに形成するのか。全3回でお伝えします。

(1)「カリスマ上司がロールモデル」の時代は終わった ←今回はココ
(2)組織が生き残る条件「シェアド・リーダーシップ」
(3)いかにシェアド・リーダーシップを身に付けるか

―― リーダーとリーダーシップはこれまで、企業経営の現場でも学術研究の場においても、大きな関心を引き付けてきました。石川さんは現在こそ新しいリーダーシップが必要と言われています。それはなぜですか。

石川 淳さん(以下、敬称略) VUCA(Volatility=変動、Uncertainty=不確実、Complexity=複雑、Ambiguity=曖昧)といわれる現在はまさに、これまでの成功体験が通用しない時代、誰も正解を知らない時代と捉えることができます。

 高度経済成長の時代は、企業の経営者層や部長、課長などのリーダークラスはビジネスをする上での正解を心得ていたのだろうと思います。成功体験を積み重ねた人たちがリーダーに上り詰めていった。リーダーになった後もある程度は、成功体験がそのまま通用する時代でもあったのでしょう。

 今は違います。かつてのようなリーダーでは、例えば課長としてチームを作り、実績を上げるのは難しくなっていくのではないでしょうか。実績を上げたいと願うならば、考え方を変える必要があります。かつて尊敬していた上司とも、もしかしたら「決別」する必要があるのかもしれません。多くの人は若い頃に影響を受け、尊敬していた上司から言われたことや教えられたことを、基本的には「正しい」と受け入れる傾向があります。実は、それが正解ではない場合があるのです。

 つまり、かつてのリーダーシップと、VUCAの時代のそれとは違うと私は考えているのです。例えば、現在の新型コロナウイルス感染拡大への対応策を考える場合、正解はなかなか見つかりません。だから私たちは学ぶしかないのですが、個人で学習できることは限られています。集団で学習する必要があるのです

「先例や正解が見つからない時代には、組織は高速で学びを繰り返す必要があります」(立教大学経営学部の石川淳教授)
「先例や正解が見つからない時代には、組織は高速で学びを繰り返す必要があります」(立教大学経営学部の石川淳教授)

 VUCAの時代においては、集団の学習を促すことができるリーダーが求められています。時間的な制約があるからこそ、学習のサイクルをさらに速いスピードで進めることが必要です。トライアンドエラーを速いスピードで実行し、集団で学ぶことを実現するためのリーダーシップが大切なのです。