女性の2人に1人は90歳まで生きる時代。更年期以降も豊かに生きるには、健康で自立していることが大切です。特に閉経後はデリケートゾーンに悩みを抱える人が増えてきます。女性医療クリニックLUNA理事長、関口由紀さんに更年期以降に起こる体の変化とそのケアや治療法について聞きました。最終回は腟と骨盤底筋のケアについて紹介します。

(1)更年期以降こそエイジングケアで「女性であること」を楽しむ時間
(2)フェムゾーンは第2の顔 見て分かる老化の兆候とは?
(3)尿漏れや腟ゆるみの原因となる骨盤底筋の衰えをチェック ←今回はココ

排尿や排便をコントロールするのが骨盤底筋

編集部(以下、略) 女性ホルモンの分泌が減る閉経後も活動的に生きるためには、下半身のケアが大切だということが分かりました。GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)の症状の中でも多くの女性を悩ませているのが尿漏れですよね。QOL(生活の質)を下げる症状ですが、病院へいくのを躊躇(ちゅうちょ)する人も多いと思います。

関口由紀さん(以下、関口) 重い物を持ったり、くしゃみやせきをしたりすると尿が漏れてしまうのは「腹圧性尿失禁」、頻繁に尿意を感じてトイレの回数が多く、尿が漏れてしまうこともあるなら「過活動膀胱(ぼうこう)」の可能性があります。私の専門は泌尿器科ですが、日本では男性患者が中心というイメージが強いですよね。でも、世界的にみると米国と英国には女性泌尿器科という独立した専科があります。尿漏れの悩みを持つ女性は多く、日本でも女性クリニックに泌尿器科が必要だと思っています。

―― 尿漏れは手術をしないと治らないのでしょうか。

関口 手術も1つの治療方法ですが、その前に生活習慣の改善や骨盤底筋のトレーニングなどによって改善することもできます。他の筋肉と同じように、骨盤底筋も意識して鍛えるとよみがえります。

尿漏れは筋力の低下によって誰にでも起こる症状
尿漏れは筋力の低下によって誰にでも起こる症状

関口 骨盤底筋は排尿や排便をコントロールしています。骨盤底には骨がなく、胴体の一番底で、尿道や腟、肛門などを下支えしている筋肉・筋膜・皮下組織・靭帯なで構成されたプレートです。インナーマッスル(深層にある筋肉)なので、日ごろはあまり意識されることがありませんが、ちょうど自転車のサドルが当たる部分だとイメージしていただくといいかもしれません。

 骨盤底筋は直立歩行や出産によってダメージを受けやすいうえ、日常動作で動かすことが少ないため、鍛えにくく老化しやすい筋肉です。ここが衰えると、尿漏れ、頻尿、便秘などの原因となります。

―― ダメージを受けやすく、老化しやすいのですね。骨盤底筋はどのように鍛えればいいのでしょうか?