女性の2人に1人は90歳まで生きる時代。更年期以降も豊かに生きるには、健康で自立していることが大切です。特に閉経後はデリケートゾーンに悩みを抱える人が増えてきます。特集記事「更年期以降に始まるデリケートゾーンの悩み 最新治療を紹介」でも取材した女性医療クリニックLUNA理事長、関口由紀さんに、更年期以降に起こる体の変化とそのケアや治療法について詳しく聞きました。全3回でお届けします。

編集部(以下、略) 40代になると更年期やそれ以降のことも気になります。女性ホルモンの分泌が減ると更年期になり、やがて閉経を迎えますが、生理が終わる以外に、女性の体にはどんな変化が起こるのでしょうか?

関口由紀(以下、関口) 更年期は女性ホルモンのゆらぎによって自律神経が乱れ、ホットフラッシュや発汗、不眠、うつ、記憶量の低下などが起こりやすくなります。その時期を経て、女性ホルモンが少ししか出ない閉経期を迎えますが、その頃から病気の質も変わってきます。

 女性の体は女性ホルモン(エストロゲン)によって守られているため、卵巣からのエストロゲンの分泌がなくなると、血管や骨に関わる疾患が増え、脂質異常や高血圧といった心血管系の疾患や骨粗しょう症などにかかりやすくなります。これまで血圧に異常がなかった人でも閉経後に高血圧になったり、コレステロール値が急に上昇したりすることもあります。また、髪や皮膚などの潤いを保ってくれるのもエストロゲンです。肌が乾燥するとともに、外陰部や腟周辺の萎縮や乾燥も生じます。

 最近では腟の乾燥や萎縮による性交痛や外陰部のかゆみや痛み、尿漏れや尿失禁といった症状を総称してGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)と呼び、女性のQOLを下げる疾患として対処するようになってきました。

更年期以降の体の変化はエストロゲン量の低下と深く関わっている(日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会:日産婦誌2000) 
更年期以降の体の変化はエストロゲン量の低下と深く関わっている(日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会:日産婦誌2000) 

―― 更年期以降は女性ホルモンの分泌が減ることで全身にさまざまな不調が出てくるんですね。

関口 確かにそうですが、悪いことばかりではありません。閉経すると「女性ではなくなる」と悲しむ女性もいますが、毎月の生理の煩わしさや妊娠の心配、不妊の悩みからは解放されます。生理周期や更年期によってイライラしたり、不安を感じたりする人もいますが、それは女性ホルモンの変動による問題であることも多く、閉経後には落ち着いていきます。そういった“女性ホルモンの呪縛”にとらわれず生活できるという良さもあります。