日々伝えられるニュースや宣伝情報。「あれ?」「どうして?」と、疑問や違和感を覚えることはありませんか? そんなARIA世代のひっかかりについて、違う角度からの意見を識者に聞いたりして、「なるほど!」をお届けします。今回は、即位の礼で話題になった安倍昭恵さんの装いについてです。

 2019年10月22日に執り行われた、天皇陛下の「即位礼正殿の儀」。このとき、内閣総理大臣夫人・安倍昭恵さんが着ていたドレスに対して、批判の声が上がっています。「スカートの丈が短い」「袖のデザインが奇抜」……など。あの場にふさわしい服装はどのようなものだったのか。パーソナルスタイリストの草分け、政近準子さんに解説してもらいました。


物議を醸した、白いひざ丈のドレス

 「即位礼正殿の儀」が、令和元年(2019年)10月22日、国の儀式として行われました。

 伝統の装束をまとわれた皇室の方々のお姿は息をのむほどの美しさ。伝統の重みを感じ、誇らしくテレビの映像を見つめた人は大勢いらしたと思います。そんな中、首相夫人・安倍昭恵さんの装いが物議を醸しました。

即位礼正殿の儀で万歳三唱をする安倍昭恵さん(写真左から2人目)。袖先が釣り鐘状に大きく膨らんだ個性的なデザインのドレスが注目を集めた(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
即位礼正殿の儀で万歳三唱をする安倍昭恵さん(写真左から2人目)。袖先が釣り鐘状に大きく膨らんだ個性的なデザインのドレスが注目を集めた(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 結論から申しますと、パーソナルスタイリストとして、もし私が衣装のオファーを頂いていたならば、あの白いひざ丈のドレスを候補に上げることはなかったでしょう。

 スタイリストが顧客の装いを決めていく手順として、まずはドレスコードを確認します。例えば毎年2回、春と秋に開催される天皇、皇后両陛下主催の園遊会。こちらに招待される方々の服装アドバイスの依頼を多く受けますが、私はご提案する前にドレスコードの概念から伝え、ご自身で考えていただくことを重視します。

 数千人もの招待客が同じドレスコードで集うのです。ご自身の立場や立ち居振る舞いについて、実際にその場に行った様子をイメージする想像力が必要です。集う人々皆で作り上げる空間にどんな空気が求められているのか。その空気を乱すことなく、それぞれが役割を果たせている空間だからこそ、集う人々皆が特別なものに感じられるのです。

デイドレスOKと書いてあったかどうかが問題ではない

 例えば、園遊会で一列目に並び、天皇陛下からお言葉をいただく立ち位置である場合と、そうではない場合とでは、装いの考え方には「幅・差」が生まれます。この幅というグレーゾーンがドレスコードに間違いはなくとも、違和感を与えてしまうことがあるのです。

 ちなみに、園遊会の女性のドレスコードはデイドレス、白襟紋付または訪問着などとなっており、このたびの昭恵さんの装いについても「デイドレス」という記載が「ロングドレス、白襟紋付、またはそれに相当するもの」と並んであったとされています。同じデイドレスでも屋外と屋内では違いますし、最も大事なことはデイドレスと書いてあったかどうかではなく「即位礼正殿の儀に準じていたのか」ということであり、ファーストレディーである昭恵さんの装いは儀に準じていたとは言い難い、それが答えなのです。