丈だけでなく、色もデザインも問題あり

 着物のドレスコードの補足として、日本では男性が洋装のえんび服でありながら女性が和装の留め袖を着用することが、当たり前のように見られます。事実、私自身の結婚式の際も、父はモーニング(*注)、母は黒留め袖でした。しかし洋装と和装が混在することは、他国の人からは不思議に思われることもあるのです。日本は独自の組み合わせをドレスコードとして創ってきたともいえることを改めて知っておいてください。

*モーニングは最上級正礼装の一つ。黒い上着に、コールパンツと呼ばれる、しまのスラックスを合わせる
安倍首相に格式を合わせると、昭恵さんには「色留め袖、または肌を隠し、体に沿いすぎないロングドレスがふさわしかった」(写真:毎日新聞社/アフロ)
安倍首相に格式を合わせると、昭恵さんには「色留め袖、または肌を隠し、体に沿いすぎないロングドレスがふさわしかった」(写真:毎日新聞社/アフロ)

 そういうことをトータルに考えて、私がもしスタイリストとして昭恵さんの装いを担当したならば、まずお着物(色留め袖)がふさわしいとご提案をしました。もしご本人が洋装をご希望となれば、肌を隠して体に沿いすぎないシルエットのロングドレスで、何らかの思いとメッセージを深めのお色目や素材などに込めたと思います。

 昭恵さんのドレスが丈さえ長ければという意見もありましたが、丈だけではなくいくつかの問題点がありました。

 まず、色。ホワイトは洋装の色の格式の中でも最も高く、明度の高さからしても主役以外がまとえば、主役を脅かす存在となり、目障りともいえます。ウエディングシーンにおいても花嫁と同じ白は着ない、などの基本があるように、即位礼正殿の儀においても、ふさわしくないお色目なのです。主役の位置にいない場合、最高峰のお色目を安易に着用するのは、こうした違和感を招きます。

 またデザインは袖口にかけて広がる釣り鐘型の袖、ベルスリーブと言いますが、こちらは現在の若い人たち中心のトレンド感が満載です。昭恵さんがこのようなデザインをまとわれると、どうしても洗練よりもかわいさのような「趣味的なもの」が伝わり、知的に見えません。トレンドや趣味的なものは、この場には必要ありませんでした。

 ただ日本のデザイナーの方に依頼されていることには賛同できます。このたびは別の機会のためにあつらえたドレスを着回ししたことが問題を招いたようです。

 ドレスコードの読み解きで一番重要なのは、かけがえのないその場の空気を作る、「自分もその一員である」という責任と自覚を持つこと。経験がなく分からないなら、過去に行われた催しの情報も参考にしてあせらずに準備をすることです。