日々伝えられるニュースや宣伝情報。「あれ?」「どうして?」と、疑問や違和感を覚えることはありませんか? そんなARIA世代のひっかかりについて、違う角度からの意見を識者に聞いたりして、「なるほど!」をお届けします。今回は、年金制度とモデル年金のお話です。

 国の年金制度について、先日、5年に一度の「診断」結果が出たニュースを聞き、先行きの暗さにがっかりすると同時に、標準的なモデル年金が今も「働く夫と専業主婦の妻」であることに違和感を覚えた人もいるのではないでしょうか。今は働く女性のほうが多いのに、このシミュレーションは時代遅れじゃないの? ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんに解説してもらいました。


国の年金の財政検証結果は、5年前より好転している

 国の年金制度について5年に一度の「人間ドック」ともいえる、財政検証の結果が8月下旬に公表されました。これは幾つかの基礎数値に基づき、将来の公的年金の財政見通しをシミュレーションし、情報公開するものです。

 「年金20%ダウンの見通し」のように新聞記事ではマイナスイメージの数字が並んだので、「ほらやっぱり」と思った方もあるでしょう。

公的年金の財政検証のニュースは、「5年前より年金財政が20%悪化した」という印象を多くの人に与えたのでは
公的年金の財政検証のニュースは、「5年前より年金財政が20%悪化した」という印象を多くの人に与えたのでは

 しかし、実はこれ、5年前の検証時にも織り込まれていた給付引き下げが行われる予定であることをただ繰り返し言っているだけ、ということはほとんどの人が知らないと思います。恐らく、「5年前より年金財政が20%悪化した」という印象を受けた人が多いのではないでしょうか。

 実は、年金財政の見通しは5年前より好転しました。少子化の勢いは少し止まり、経済の見通しもそう悪くない感じでしたし、高齢者や女性の雇用拡大も進んでいるという現実があるため、見通しのデータもそれぞれ上方修正されたからです。むしろ将来の経済予測については楽観予測を控え、少し低めに設定してあるくらいです。

 また、年金制度が何も法律改正をせず「無策」であった場合の将来予測も、2040年代に入るまで年金制度の所得代替率は50%を維持できると見込んでいます。所得代替率とは、年金を受け取り始める時点(65歳)の年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合か、を示す数字のこと。つまり、所得代替率が50%というのは、現役時代の手取り収入の半分の額を年金でもらえるということです。

 私は当日の社会保障審議会年金部会も傍聴してきましたが、「無策のままの20年後の予測の数字をいつまでも眺めていないで、幾つかの対策を講じた場合のシミュレーションを基に前向きの改正の議論をしましょう」というような雰囲気でした。