ヨーロッパの市民集会で増える女性登壇者

岸本 日本でもコロナ禍に対して、国に先駆けて、地方自治体が独自の具体的な支援策などを出していますね。地域主義の面白さは、政治参画のしやすさによって、政治と自分たちとの信頼関係が目に見えて分かるところにあると思います。自分たちの声が届いて、システムを変えることができた。「ああ、できるじゃないか!」と手応えを得ることで元気になれるし、その元気が積み重なって、さらに大きな流れにつながっていく。

 また、新型コロナウイルスに対する各国の対策を見ていても、女性がリーダーになっている国は比較的成功していると評価されていますね。生活者目線で政治を見られるということも大きいと思いますが、女性には、政治というものを一定の人に独占させず、どんどん開いてシェアしていく力があると感じます。今、ヨーロッパで行われているさまざまな市民集会などを見ていても、女性の登壇者がとても多くなっているなあと感じます。何も特別な人ばかりでなく、誰でもマイクを取って自由に話せるような雰囲気は、社会をよりよく変えていく力になっていると思います。

―― 新型コロナウイルスという脅威は、私たちが本当の「公」に目覚めるシフトチェンジのきっかけになるでしょうか。

岸本 変わるきっかけにしなければいけないと思います。変わるための確実なチャンスであることは確かです。過去30年間世界を覆ってきた新自由主義的グローバリズムという大きな流れの中で、公共サービスや働く人々が経済と効率の論理で縮小圧縮されてきたのは明らか。全てを市場の原理で解決しようとする論理は、既に破綻していると思います。

 誰か特別なリーダーが変えてくれるのを待つのではなく、私たちが声を上げて、政治を変えていく。それ以外に変化への道はないと思っています。

取材・文/岩崎眞美子 写真/PIXTA

岸本聡子
岸本聡子 きしもと・さとこ/オランダ・アムステルダムの政策研究NGOトランスナショナル研究所(TNI)の研究員。2001年にオランダに移住し、現在はベルギー在住。経済的公正プログラム、オルタナティブ公共政策プロジェクトの研究員。最新刊は『水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』(集英社新書)