税金の対価にもっと意識を向ける

―― 日本だと「公共事業」といえば、道路などいわゆる土建的な事業のイメージが強く、多くの無駄な投資が行われてきたという印象があります。公とは何か、公共事業とは何かということを、私たち自身も改めて考え直さなければなりませんね。

岸本 確かに日本は土建国家と言われる通り、公的事業というと道路などハード面への投資が中心です。日本は既に基本的なインフラが整っているのですから、これからの課題は、環境を破壊しない、自然環境が持つ多様な機能を利用したグリーンなインフラにいかに移行していくかです。人間が生活し、生きていくための制度やシステム、例えば医療、介護、教育が重要な「公」のインフラなのだということがもっと認識されるべきだと思いますね。

 また、「公」というとつい、政治家などが行うことだと考えてしまいがちですが、公とはつまり、私たちそのものです。政治家は私たちが選んだ代理人なのですから、税金として払ったお金に対して、私たちがどのくらいの利益を受けることができるのかということにもっと意識を向けるべきです。ただ政治家に任せて待つのではなく、市民、国民、主権者として、彼らを常に監視し、説明をさせて、鍛えていかなくてはならないと思います。

 権力とお金は結託しがちですし、そのしわ寄せは外国人労働者、障害者、マイノリティー、シングルペアレンツ、そして全ての女性、つまり声の小さい人たちのところにやってきます。その意味で、やはり女性たちにこそ、もっと政治の現場に出ていってほしいと思いますね。

―― 小さいところから変えていくことがむしろ重要だということですね。ヨーロッパの再公営化の運動を強く支えていたのは、ミュニシパリズム(地域主義・自治体主義)や女性たちの活躍だったそうですね。希望を感じます。