人間の生存に関わる部分を経済効率優先でいい?

―― 一方で、私たちも中曽根政権下の国鉄分割民営化、小泉政権下の郵政民営化など、「規制緩和」の名の下に行われる公的事業の民営化については、無駄をなくして効率化することがよいことであるという受け止め方をしてきたところがあると思います。

岸本 全ての民営化が悪いわけではありませんが、水や電力、住居や医療など、人間の生存に関わる部分は、人間にとって最低限必要なこと。そこに企業の論理を入れてしまうのは非常に危険なことだと思います。利益と効率優先という企業の論理を、生命に関わることにも適用させるつもりですか? ということを改めて考えるべきです。

 今回のようなパンデミック危機は歴史上、何度も起こってきたこと。そのような事態が起こることを予測し、それに十分備えるということは、公的機関だからできることです。医療でも水道でも、いつもの状態をキープすることだけではなく、災害や非常事態のときにもきちんと訓練されたスタッフや危機管理のシステムで対応できる体制を整えていくのは、「公」ならではの役割です。そのために私たちは税金を払っているのです。それを、市場の原理だけで運営したらいったいどうなるのか。その結果を、私たちは今まさに目の当たりにしているのだと思います。

「利益と効率優先という企業の論理を、生命に関わることにも適用させるつもりですか? ということを改めて考えるべきです」
「利益と効率優先という企業の論理を、生命に関わることにも適用させるつもりですか? ということを改めて考えるべきです」

―― 岸本さんの新刊『水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』にも詳細が記されていますが、パリ市では2010年に民営の水道事業を25年ぶりに再公営化。その後も世界各地で公営化、再公営化の波が広がっているそうですね。