女性議員が増えれば政策の優先順位が変わる

 福島氏は「超党派でいろんなメッセージや政策を出すことで、とりわけ若い女性たちに議員になることが人生の選択肢の一つと思ってもらえれば、社会がものすごく変わる。女性議員が増えれば、政策の優先順位が変わる」と話し、石井氏、畑野氏は、クオータ制を導入するための課題として選挙制度のあり方も考えていくべきだと意見した。

 女性議員を増やす取り組みとしては、18年に成立した「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」(候補者男女均等法)があるが、候補者の数を男女均等にするように政党に「努力」を求めているものの「義務」ではないため、女性議員の数はなかなか増えない。候補者数の目標設定の義務付けを盛り込むことなどを検討する超党派議員連盟の事務局長も務める矢田氏は、「法律が成立してから3年。法的拘束力が弱く、現状は理念法的になってしまっているので、一歩進めたい。(ジェンダー平等が)一番遅れているのは政治の分野。メディアを通じて世の中にもっと発信しなければ変えていけない」と訴えた。

 第1回の勉強会を終え、田原氏は「男性議員は自分たちの既得権益をなくしたくないから反対する。企業では難しいところもあるが、政治の世界は法律で(クオータ制を導入して)強制的にやるべきだ。女性議員は党を代表する立場だと自分の意見を言えないこともある。女性の協力態勢をつくるために超党派で参加を呼び掛けた」と力を込める。

 事務局長を務める長野智子氏からは、「出席者からは、クオータ(割り当てる)制をクオーター(4分の1)制だと勘違いしている男性議員が今もいるという指摘や、各党がどんな課題を抱え、クオータ制実現にはどんな障壁があり、どうすれば解決していけるのかをシェアしたいという話がありました。クオータ制の法制化は最終ゴール。まずは女性の候補者が立ちやすくなる環境づくりをこの勉強会で考えていきたい。(政治家になることに)二の足を踏んでいる女性たちが、やりたいと思えるようなメッセージを出していきたい」と話す。次回の開催は21年6月を予定している。

「私たちのようなジャーナリストが勉強会に入ることで、これまで表に出てこなかったクオータ制実現への障壁なども発信していきたい」(長野氏)
「私たちのようなジャーナリストが勉強会に入ることで、これまで表に出てこなかったクオータ制実現への障壁なども発信していきたい」(長野氏)

 日経クロスウーマン ARIAでは、1986年に施行された男女雇用機会均等法を通すために奔走し、2012年にはクオータ制導入を目指して「クオータ制を推進する会(Qの会)」を設立した赤松良子さんにも話を聞いている(女性政治家が少ない社会は「女が損する社会」)。女性の社会進出を阻む壁にどう立ち向かってきたのか、赤松さんの政治分野における男女共同参画推進法についての意見も参照してほしい。

※5月中旬から長野智子さんの新連載が始まります。「クオータ制実現に向けての勉強会」の今後にも注目していきます。

取材・文/市川礼子(日経クロスウーマン ARIA)