脳科学や心理学の知見から、人の感情や行動を解き明かしベストセラーも数多い脳科学者の中野信子さん。初の自伝『ペルソナ』(講談社現代新書)では、アカデミズムの男性原理社会での生きづらさや毒親についても語り、話題となっています。中野さん自身の経験も踏まえ、働く女性たちが抱える生きづらさの原因はどこにあるのかを聞きました。
(上)中野信子 容姿の良さが女性の働きづらさを助長する
(下)団塊の毒親に今も苦悩する40代 感謝しながら縁を切る ←今回はココ
親の影響から逃れるのは並大抵ではない
―― 「毒親」という言葉をよく耳にするようになりました。親との関係に息苦しさや生きづらさを感じている人が少なくありませんが、なぜ母親との関係はこじれてしまうのでしょう。
中野信子さん(以下、敬称略) 哺乳類は卵生の動物に比べると、子どもが自立するまでに時間がかかりますが、中でも人間は大人になるまでの時間がとても長い種です。
親の庇護のもとで十数年を過ごさなければ独り立ちすることが困難ですから、家庭内の権力者は親になります。家庭内の権力者に刃向かうとどうなるか身をもって学びながら、十数年の子ども時代を過ごすわけですから、影響から逃れるというのは並大抵のことではないですよね。親孝行したい気持ちがあったとしても、まともじゃない人が親の場合もしばしばありますから。
団塊ジュニアに多くみられる毒親体験
そして、毒親の体験はもしかしたら40代が一番多いのかもしれないと思っています。なぜなら私たちは団塊ジュニア世代です。
親である団塊の世代はすごく人数が多かったので自分の主張をすることに一生懸命で、他人の気持ちをおもんばかるところまで気が回らなかった。そんなことをしていたら欲しいものが取られてしまうという環境に、ずっと身を置いていた世代の人たちの子どもたちが今の40代なのです。
―― 中野さんご自身も40代、団塊世代のお母様との関係で複雑に思うところがありますか?