属性でなく個人で見られる組織は強い

―― 著書『ペルソナ』の中でも「実力があっても、成果を上げてもじゃあ子どもは産んだのか、だったり、旦那さんはどんな人? なんていうことを聞かれる。男性研究者がそんなことを言われるだろうか?」とありましたが、日本はまだまだ男性原理社会。コロナ禍で世界の対応を見ていると、彼我の差を感じます。

中野 中でも活躍がクローズアップされたのはオードリー・タンさんですね。新規感染者の数を200日以上ゼロに抑え込んだ台湾のデジタル担当大臣。トランスジェンダーであることを公表し、性別欄に無と書きます。性別がないという、これまでのステレオタイプでは測れない人です。そういう人が、実力を発揮できて、国の大事な政策に意見を述べて新しいシステムを構築できる。それが可能だった台湾の仕組みはすごいと思って見ています。

 属性でなく個人で見ることができた組織がどれだけ結果を出したかという、素晴らしい例。すでに話題ですが、もっと注目されてもいいと思いますね。

 台湾(蔡英文総統)だけでなく、ドイツ(メルケル首相)やニュージーランド(アーダーン首相)、フィンランド(マリン首相)など、比較的コロナ感染者数を抑えている国や地域には女性リーダーが多いですが、女性がすごいというよりも、結果的にそうなっているのではないでしょうか。女性がリーダーになれることそのものが、組織の柔軟性を表しているということですよね。ステレオタイプがある世の中で、女性をリーダーにできる柔軟性がある組織だから、結果的に良い手を打てている、ということに注目すべきなのだと思います。

 選択肢がいくつかあるときに、本当に有効な策、先例を踏襲した策、既得権益に配慮した策のいずれを取るか。柔軟に有効な策をきちんと打つことは、ステレオタイプにとらわれているとちょっと難しいのではないでしょうか。

 ステレオタイプが優勢な世の中で、リーダーの性別は問題になりませんという人々の国や組織が、新しい有効な策を取っていけるのだと感じます。

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取材・文/中城邦子