女性が采配を振るうには心理的な壁がある

中野 さらに幼いころから「女の子だからこうしなさい」「あまり頭が良いように思われてはいけない」などと、陰に陽に言われてくることで、何か率先して発言しなければいけないときも一歩引いてしまう。

 ここで発言することで「扱いにくい人間と思われたらどうしよう」という不安が、男性よりも出やすくなります。社会通念によって、女性自身も思い込み、ある程度能力を限定的に伸ばされてしまうのです。

 すると、リーダーとして采配を振るうには勇気がいる。その心理的なハードルの高さは見えにくいものなので、そういう目にあったことのない男性には理解してもらいづらい。そうした点も女性リーダーの生きづらさになっていると思います。

東大の女子学生は「第二東大生」扱い

―― 中野さんご自身も、「東大卒の女性」というステレオタイプ・スレットにさらされてきたわけですよね。

中野 東大に行くと結婚できないんじゃない?などと親世代や祖父母世代の人からはかなりの頻度で無意識の脅しがありましたし、「女の子『なのに』数学ができるんだね」と謎の褒められ方をしました。そうした中で、徐々に「理系」であることと「女」であることは両立しないものだという、根拠は浅いけれども根の深い通念が刷り込まれていくのです。

 当時は、実際に東大女子の数は少なく、94年入学の私の代で16%程度。工学部に進学すると応用化学科は女性が10%でした。そして女子の場合、東大に入った時点で「第二東大生」とでもいうような扱いでした。女性としては二流、東大生としても二流みたいな感じがありましたね。

―― 男性脳、女性脳とよく聞きますが、リーダーシップという点で、男女の性差による能力の違いは、やはりあるのでしょうか。