瀬谷ルミ子さんは、ルワンダ、アフガニスタン、シエラレオネなどで国連PKO、外務省、NGOの職員として紛争地域の武装解除に取り組んできた。やがて、争いの後に加害者を更生させるだけでは、失われた命など取り戻せないものがあると痛感。現在は、紛争予防のためにNPOで活動している。

武器を回収し、兵士を平和な社会に戻す

日経xwoman総編集長・羽生祥子(以下、敬称略) 瀬谷さんは紛争地域に乗り込んで、武装解除をするという仕事をされてきたわけですが、「武装解除」という言葉には「ものものしくて危険がいっぱい」というイメージがあります。「瀬谷さんのような華奢な女性が紛争地に?」ということが最初の驚きでした。

NPO法人 日本紛争予防センター理事長・瀬谷ルミ子さん(以下、敬称略) 危ないイメージだらけですよね(笑)。でも、武装解除は一旦戦闘が収まり和平合意が結ばれた地域で行われることが多いんです。その目的は、平和を取り戻すために、武装勢力から武器を回収することです。

 一般の戦闘員が武器を手放し、武装勢力から距離をおけるようになることがとても重要になります。兵士だった彼らが平和な社会で生きていけるように教育支援や職業訓練をして、一般社会に戻すことが肝心。そうしないと、せっかく平和になっても、仕事を失った兵士が生活のために手元の武器を使って犯罪に走ってしまうのです。

ケニアでは2007年末の大統領選を機に部族間の対立が暴動につながって、数千人が亡くなり30万人以上が避難民となった。写真はケニアのスラムにて
ケニアでは2007年末の大統領選を機に部族間の対立が暴動につながって、数千人が亡くなり30万人以上が避難民となった。写真はケニアのスラムにて

羽生 武装地域の兵士には、未成年の子どもも多いんですか?

瀬谷 多いですね。紛争地の平均寿命はとても短くて、28歳という地域もありました。そういう社会にいると、若者は将来に希望を見いだせずに武装勢力やテロ組織に参加してしまう。食べ物がもらえる、教育を受けられるという甘い言葉に誘われてしまう子も多く、なかには10歳未満の子ども兵もいます。

 志願兵だけでなく、誘拐されて無理やり兵士にされる子や、兵士の奥さんにさせられる女の子もいます。実態はレイプに近いので、その女の子も自分の子どもが愛せないという悲劇の連鎖が生まれたりします。