紛争が起きる前に予防する方法を考える

羽生 瀬谷さんはさまざまな紛争地で国連PKO、外務省、NGOの職員として武装解除に従事し、現在は紛争予防のNPO理事長として活動されています。

瀬谷 20代は武装解除を専門に活動しましたが、争いの後に加害者を更生させるだけでは、亡くなった命など取り戻せないものもあるのを痛感しました。だったら、悲劇が起きる前に予防すること、それが解決策のひとつになると考えるようになったんです。武装解除は紛争が起きてしまってからの活動ですが、紛争を予防することで解決できることもあります。30代は自分の方向をそんなふうにシフトして、独自に動けるNPOで働くことにしました。

羽生 予防という言葉からイメージするのは、風邪などそこまで重くないテーマ。紛争というカオスに対して「予防」という言葉を使っているのが非常に印象的ですね。

瀬谷 そうですね。でも、紛争は予防できるものだし、予防すべきもの。30年近く前に国連事務総長も「防ぐことの重要性」を語っていました。予防には地道な努力が必要で、その成果を理解してもらうのも難しい。上手くいって当たり前ですから。でも、壊れた建物は直せても失った命は戻らないし、心に受けた傷はなかなか癒やせないんです。

羽生 確かに紛争が起きると世界中から注目されますが、平和を維持していることはニュースになりにくいものですよね。

「紛争というカオスに対して『予防』という言葉を使っているのが非常に印象的です」(羽生)
「紛争というカオスに対して『予防』という言葉を使っているのが非常に印象的です」(羽生)

羽生 ところで、以前、国連広報センター所長の根本かおるさんに「女性が関わることで和平条約が上手くいく確率が高くなる」ということを聞いたのですが。

瀬谷 和平プロセスに女性が参加すると、和平が15年以上持続する割合が35%まで上がるというデータがあります。ただし、名前だけのお飾りではダメで、女性が主体的に関わることで効果が表れるという分析がされています。

羽生 それは、なぜでしょうか。