「もうこれで最後になると思うから、笑って」と母に

―― ARIA世代には、「母とは違う生き方」を選んで歩み、だからこその葛藤や確執を経験してきた女性も少なくありません。小川さんの言葉は、一つの救いになりそうです。

小川 そうなるとうれしいですね。結局、母は1年ももたずに亡くなってしまいましたが、不思議と亡くなってからのほうが母の人生に自然と寄り添えるようになったんです。「あのときのあの言葉は、こういう背景があってのことだったんだな」と、やっと理解できたり、受け入れたりすることができました。

 自分の立ち位置が変わったら、これまで何かが邪魔して見えなかったものがいくつも見えるようになった。そんな感覚がありました。

 亡くなる瞬間はみとることはできなかったのですが、その数日前に会うことはできました。母の様子から「多分、そろそろだな」と分かったので、「もうこれで最後になると思うから、笑って」と言ったら、それまで不機嫌だった母が笑ってくれました。いいお別れができたと思っています。

―― 亡くなる直前に、母娘関係の結び直しができたのですね。今、寂しさを感じることはないのでしょうか?

「『もうこれで最後になると思うから、笑って』と言ったら、それまで不機嫌だった母が笑ってくれました」
「『もうこれで最後になると思うから、笑って』と言ったら、それまで不機嫌だった母が笑ってくれました」