2019年12月、池袋に宝塚歌劇がやって来ます。かつて東京23区で唯一「消滅可能性都市」と名指しされた豊島区が宝塚歌劇を招へいできた理由は? 「東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)」のオープン直前、宝塚歌劇団理事長の小川友次さん、東京都豊島区長の高野之夫さんの対談をお届けします。
(上)えっ、宝塚歌劇が池袋に? 夢をかなえた豊島区長の奮闘
(下)「宝塚歌劇流」人の育て方 稼働率は驚異の100%超 ←今回はココ
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⇒えっ、宝塚歌劇が池袋に? 夢をかなえた豊島区長の奮闘
今から5年前の2014年に、東京23区で唯一「消滅可能性都市」として名指しされた豊島区(*注)。以来、女性に好かれる街づくりに挑戦し続け、若年女性人口を回復させました。
区長が取り組んできた数々のチャレンジの1つが、「池袋に宝塚歌劇を呼ぶ」こと。その奮闘が実り、2019年11月に「国際アート・カルチャー都市」の拠点として池袋東口にオープンする「東京建物Brillia HALL」のこけら落とし公演の1つが、宝塚歌劇団星組による『ロックオペラ モーツァルト』となりました。豊島区はなぜ宝塚歌劇を招きたかったのか? 宝塚歌劇団がそれに応じた理由とは? 宝塚歌劇団理事長の小川友次さん、東京都豊島区長の高野之夫さんに聞きました。
ARIA世代も感動! 舞台の端まで全力投球する姿
―― 一昔前までは、宝塚歌劇(以下、タカラヅカ)ファンというと「家庭の奥様」というイメージが強かったのですが、近年は働く女性たちを含め、ファン層が拡大していると聞いています。
小川友次・宝塚歌劇団理事長(以下、敬称略) 観客席を見ていて、変化は確かに感じますね。観客の男女比は圧倒的に女性が大きいのですが、最近は男性も増えてきています。舞台関係の方々からも「ファンです」という声を聞く機会が多くなっています。プロフェッショナリズムで通じ合っているのでしょう。
高野之夫・東京都豊島区長(以下、敬称略) 家庭にいる方々、社会で働く方々ともに、自分の務めに真剣に取り組んでいる点が、タカラヅカファンの共通項ではないでしょうか。私もタカラヅカの舞台を見ると、大いに励まされます。
小川 実は私も同じなんです。宝塚歌劇団では演者を「生徒」と呼びます。生徒たちは「お客様に喜んでいただく」という使命をもって舞台に立つわけですが、トップスターから入団したばかりの生徒まで、全員が1回1回の舞台で、その使命を全うしようと全力で頑張っています。
高野 「お客様のために」という意識は行政にも必要で、豊島区では区庁舎で迷っている方がおられたら、必ずお声をかけるようにしています。そこにはタカラヅカファンである私の意向も、少し入っているかな、と(笑)。
小川 先日、入団時から研さんに研さんを積んでトップスターになったある生徒に「かつての私同様、今は舞台の端っこにいる生徒でも、いつかは舞台の中央に立つと信じて頑張り抜いている。その成長ぶりを見ていてください」と言われました。いいこと言うなあ、と生徒から学ぶ思いでしたね。