怖い、汚い…と言われた池袋にタカラヅカが

―― そもそも「タカラヅカと池袋」という組み合わせに意外性があります。

小川 実は私も豊島区からお話をいただいたときの第一声が「え、池袋にタカラヅカ?」(笑)。正直に申しますと、少し戸惑いました。

高野 私は池袋に生まれ育ち、この街が大好きなのですが、残念なことに池袋のイメージは長く「暗い、怖い、汚い」の3Kでした。この街のイメージを明るく変えていくことは区政を担って20年以上になる私の念願。旧豊島公会堂の建て替え案が出たときから「タカラヅカを呼べる劇場に」と考えていたのです。

宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)の正門すぐにあるレビューの大看板の前で。豊島区高野区長(左)と宝塚歌劇団小川理事長(右)
宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)の正門すぐにあるレビューの大看板の前で。豊島区高野区長(左)と宝塚歌劇団小川理事長(右)

小川 タカラヅカの舞台はよくご覧になっていたのですか。

高野 亡くなった家内に引っ張られて見に行くようになったのは十数年前からです。華やかで元気で、まさに「清く、正しく、美しく」を地で行く舞台に、見るたびに引き込まれていきました。以来、年に数回は、娘や知人たちと一緒に劇場に足を運ぶ、タカラヅカファンのひとりです。

小川 当初こそうまくイメージできませんでしたが、池袋は西口に「東京芸術劇場」、東口に「あうるすぽっと」があり、文化活動の実績をお持ちです。何よりも高野区長のリーダシップで、街がダイナミックに変わり始めた。一方、宝塚歌劇団としても常に新たなファン層を開拓していきたい。これはいい話だなと、私の方もどんどん前向きになっていきました。

高野 私が最初に兵庫県宝塚市にある宝塚歌劇団にお願いに伺ったのが、ちょうど小川さんが理事長に就任された2015年です。2014年の宝塚歌劇団100周年以来、タカラヅカの注目度はさらに高まり、さぞいろいろな方面からのアプローチがあったことと思います。

小川 正直に言って、さまざまなオファーをいただいています。でも実際に上演するには、ハード面、ソフト面ともに、タカラヅカに対する深いご理解が必要で、なかなか難しい。Hareza池袋では、行政がここまで大型の劇場事業を企画して、情熱を持って積極的に進めておられた。私どもにとっても心強かったですね。

池袋駅東口側に8つの劇場が集結するHareza池袋は2019年11月にオープン(ハレザタワーを含めたグランドオープンは2020年)。東京建物Brillia HALLはその先駆けとして2019年11月からこけら落とし公演を行う
池袋駅東口側に8つの劇場が集結するHareza池袋は2019年11月にオープン(ハレザタワーを含めたグランドオープンは2020年)。東京建物Brillia HALLはその先駆けとして2019年11月からこけら落とし公演を行う