特別区で最大の90万人を擁する東京都世田谷区。ここに2年前設立された世田谷コミュニティ財団は、民間による公益活動や地域社会の課題解決を支える、東京では初のコミュニティ財団です。代表理事の水谷衣里さんはたまたま住むことになった世田谷でボランティアに関わったことを機に、4年越しでコミュニティ財団を立ち上げました。仕事の経験や知見を社会に還元したいと考える40代、50代も注目しているというコミュニティ財団。創設した理由や活動について聞きました。

―― 今回のコロナ禍で、いまだかつてないほど地元で過ごす時間が長くなった人は多いですね。あらためて地域のコミュニティーに意識が向いた人もいると思います。「地域の公益活動を支援する」コミュニティ財団というものが各地にあるということを知らなかったのですが、どんな事業をしているのですか。

水谷衣里さん(以下、敬称略) そもそもコミュニティ財団と呼ばれる組織は世界に1800ほど存在します。日本は2008年の公益法人制度改革以降、本格的にその数が増加しました。財団は、寄付などで得た資金を地域の民間公益活動に助成します。社会課題を解決するプロジェクトの運営、地域で活動する団体への伴走支援なども行っています。

 さらに、世田谷コミュニティ財団は世田谷区という都市部を拠点としているので、疎遠になりがちな都市の人と人の関係性をつないで新しい価値を生み出すことも目指しています。

みずたに・えり/世田谷コミュニティ財団代表理事、風とつばさ代表取締役。大学院卒業後、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社。政策立案・コンサルティング、民間公益活動の基盤強化に関する調査研究、企業の社会貢献活動などの実現に向けたコンサルティングに従事する。2017年に退社、風とつばさを設立し調査研究、コンサルティング、執筆などを行う。18年4月に世田谷コミュニティ財団を設立
みずたに・えり/世田谷コミュニティ財団代表理事、風とつばさ代表取締役。大学院卒業後、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社。政策立案・コンサルティング、民間公益活動の基盤強化に関する調査研究、企業の社会貢献活動などの実現に向けたコンサルティングに従事する。2017年に退社、風とつばさを設立し調査研究、コンサルティング、執筆などを行う。18年4月に世田谷コミュニティ財団を設立

―― 春からのコロナの自粛下で、新しいプロジェクトを実施していますね。

水谷 1つは、コロナによって生活困難を抱える方たちを支えるための通称「かけはし基金」を設置し、2020年5月に寄付の募集を始めました。集まった寄付は地域で活動する団体に審査の上、助成金として提供します。

 今回の助成先には、生活に困窮する子どもたちへの食材を提供するフードパントリーの活動や、生きづらさを抱える子どもたちの居場所をつくる、地域のお母さんたちの活動などが含まれています。コロナによる影響が広がる中、地域で自主的・自発的な活動が多様に広がりました。こうした活動を寄付の力で応援しよう、地域に根差すコミュニティ財団として、寄付者と現場の団体との架け橋になろう、と始めたのが「かけはし基金」です。