「大丈夫だよ」。焦っていた若い頃の自分に伝えたい
早川 でも、30代半ばになって、もう一度映画学校に入ってみたら、すごく楽しくて。自分よりうんと若くて頼りない子もいたけれど、一緒に映画を作る毎日がいとしく感じられました。子育てを含め、いろんな経験を積んだことで、自分自身の心の許容範囲が広がったからかなと思います。
そういう意味でも、結果的に回り道してよかったなと思いますし、焦燥感にかられていたあの時の自分に会いに行って、「大丈夫だから」と言ってあげたいです。
―― 監督が映画を作る上で大切にしていることは何でしょう。
早川 映画を見る楽しみって、この人物は何を考えているんだろうとか、どんなふうに感じているんだろうとか、想像するところにあるんじゃないかと。もし、登場人物が「自分はこう思っている」と、事細かに言葉で説明していたら、なんだか冷めちゃう気がするんです。だから、私が作る映画においては、なるべく想像する余地を持たせたい。分かりやすい映画にはならないかもしれませんが。
どんな風景を撮るか、人物のどんな表情や姿を撮るかで、言葉だけでは伝えられないものが伝えられる。それが映画作りの醍醐味だと思いますね。
―― この先の展望は?
早川 自分の中で撮りたいものはありますが、まだプロデューサーが決まっていないので、どうなるかなぁと。現時点では他の仕事も決まっていないので、無収入になる恐れもあります(笑)。いばらの道ですね、映画監督の仕事は。でも、これからもきっと、この道を生きていくんだと思います。
取材・文/伯耆原良子 構成/市川礼子(日経xwoman ARIA) 写真/洞澤佐智子