社長が「後任はこの人」と決めたときの行動

―― きっと山下さんの後に続く人も出てくるんでしょうね。

山下 性別も、雇用形態も関係なく、そのポジションにふさわしい人がなればいいな、と思いますね。まだ気が早いですが(笑)、私もいずれ後任に引き渡す日が来るでしょうから。

 振り返ると、前社長だった小林(琢磨氏)が、あるときからグループ全体で行われる表彰式などフォーマルな場で、私のことを社の代表としてスピーチをするように指名したり、ディセンシア社内以外の場に行く機会に声をかけてくれたりしました。おそらく多少なりとも後任として、もしくはキーパーソンとして意識してくれていたのかもしれません。そこから思うのは、私自身も「後任はこの人」と決めるときがきたら、同じようにグループ内などへのPRを怠らないようにしようということです。

 確かに子会社の社長になる場合、その名前がグループ内に知られていないと、「どういう人物なんだろう?」というところから始まり、認識されるのに時間がかかります。スムーズに認知され、仕事がしやすくなるためにも「そのとき」が来たら、後任者のPRに努めたいと思いました。

―― 失礼を承知で聞きますが、山下さんのように異例の出世を果たしたことに対して、やっかみを持つ人もいたのではないでしょうか。

山下 化粧品ブランドは女性が多い職場だけに、よく「社内の人間関係は大丈夫なんですか?」と聞かれることが多いんですけど、それがまったくもっていい人が多くて(笑)。私が知る限りは人のことを悪く言ったり、おとしめたりする人がいないんです。それは私が鈍感なだけかもしれませんが、入社以来、職場の人間関係で「嫌だな」「陰口言われてるな」と感じた経験はありません。そういうのって、なんとなく分かるじゃないですか。たぶん皆、「このブランドをどうやって育てていくか?」「お客様にどう喜んでもらえるのか?」というミッションのほうに意識が向いていて、そのことに忙しいからだと思います。

 グループ企業全体に広げてみれば、「山下って何者?」と、いぶかしげに思っている人も中にはいるかもしれませんが、私がそうした周囲からの反応がまったく気にならないのは、ディセンシアが成長し続けているからだと思うんです。何度か「意見交換させてほしい」とグループ企業の人たちから言われたりするのですが、そんなときも私はもったいぶらずに何でも情報を出します。こんな感じで普段から開けっぴろげな性格なので、たぶん会った相手も「この人って悪い人じゃないかも」と思ってくれるんだろうなと。

―― 社長になってみて、これまでとは違うプレッシャーはありますか?

「『山下って何者?』と、いぶかしげに思っている人も中にはいるかもしれませんが、私がそうした周囲からの反応がまったく気にならないのは、ディセンシアが成長し続けているからだと思うんです」
「『山下って何者?』と、いぶかしげに思っている人も中にはいるかもしれませんが、私がそうした周囲からの反応がまったく気にならないのは、ディセンシアが成長し続けているからだと思うんです」