銀行員としてフルタイムで働きながら映画監督として活躍する香西志帆さん。現在は2歳になったばかりの男の子を育て、MBA(経営学修士号)取得のため地元高松から神戸大学の大学院にも通学中だという。下編では、あくまで銀行員という立場を維持したままで二刀流、三刀流で活躍するわけを聞いた。

(上)副業禁止の銀行員が無給で映画監督を続ける訳
(下)一般職の銀行員が四足のわらじ キャリアは「広く浅く」 ←今回はココ

観光誘致のため食品プロデュースを手がける

 映像作家、映画監督としての活動で、香西さんは数々の賞を受賞した。2015年には、高松市が舞台の長編映画『猫と電車―ねことでんしゃ―』などが評価され、高松市文化奨励賞を受賞。2017年には、盆栽のプロモーション映像『盆栽たいそう』が米国ハリウッド・ドリームズ国際映画祭の最優秀ミュージックビデオ部門で準優勝、小豆島のプロモーション映像『しまこと小豆島』は、米国のアクション・オン・フィルム国際映画祭において最優秀外国語作品賞部門で準優勝を果たした。

香西志帆さん(右)。1976年香川県生まれ。銀行員、映画監督、商品企画、コンサルタント、大学講師などマルチに活躍。盆栽のプロモーション映像『盆栽たいそう』は、米国ハリウッド・ドリームズ国際映画祭の最優秀ミュージックビデオ部門で準優勝した
香西志帆さん(右)。1976年香川県生まれ。銀行員、映画監督、商品企画、コンサルタント、大学講師などマルチに活躍。盆栽のプロモーション映像『盆栽たいそう』は、米国ハリウッド・ドリームズ国際映画祭の最優秀ミュージックビデオ部門で準優勝した

 ユニクロのブランドプロモーション映像「瀬戸内オリーブ基金」やうどん県(香川県)プロモーション映像『ウドン・オブ・ミュージック』なども手がけ、地元香川を中心に地域創生作品を生み出すにあたり、映像制作だけでなく、商品のプロデュースやコンサルティングも引き受けるようになっていた。

 「人に来てもらうには『絶景と食があればいい』とどこかで聞いたことがあって。そこで食品にも力を入れたいなと思ったんです。香川県のまんのう町はひまわりオイルの産地として有名なんですが、道の駅で売られていたペットボトルに入ったひまわりオイルを試食してみたら、全然おいしくなくて……。そこで日本各地のひまわりオイルをいろいろ取り寄せては研究し、サンプルをつくったり、パッケージを考えたりして『まんのうひまわりオイル』をつくり上げました」

 香西さんがプロデュースした「まんのうひまわりオイル」は、2018年の香川県の優秀な産品を決める「かがわ県産品コンクール」で最優秀賞を獲得。さらには全国の優良なふるさと食品と生産者を表彰する「優良ふるさと食品中央コンクール」で農林水産大臣賞を受賞したという。

香西さんがプロデュースしたひまわりオイルの新シリーズ「まんのうひまわりオイルPREMIUM」
香西さんがプロデュースしたひまわりオイルの新シリーズ「まんのうひまわりオイルPREMIUM」

 映像も撮れて、商品プロデュースもでき、それぞれで結果を残している。「銀行を辞めて独立する気はないのか」という問いに対し香西さんはこう答えた。

 「いやいや、恐ろしくて。そんな自信ありませんよ!」