正社員と非正社員の格差が女性の貧困につながっている

坂東 きっと日本の男性の多くは「最近は女性の地位が向上した」「日本も変わってきたな」と思っていらしたかと想像しますが、その日本の変化はほかの国に比べるとかなりスピードが遅いのです。

―― こうした社会課題の解決に対して財団として具体的に取り組まれているのはどんなことですか?

坂東 SDGsについては、今の日本の社会で取り組まなければいけない課題に優先順位をつけて集中して取り組むことが必要だと考えています。SIIFが具体的に行っている事業の一つがシングルマザーの支援です。子どもの貧困率は2015年に13.9%まで改善されたと言われていますが、いまだに約270万人の子どもが貧困状態にあります。日本における子どもの貧困問題はシングルマザーの経済的困窮の反映です。ジェンダー・ギャップ指数が特に低いのは政治と経済の分野。日本の働く女性の56%が非正社員であり、正社員と非正社員の格差がイコール女性の貧困につながっています。

これからは「継続就業」が基本的な人生戦略

坂東 なぜシングルマザーで家計を支えなくてはならないのに、非正社員なのか。今まで女性は出産・育児で退職するから正社員としての再就職が難しくなると言われていました。だから私は、女子学生たちに「継続就業」を基本的な人生戦略だと伝えています。では、現在貧困にあえいでいるシングルマザーに対してどういう取り組みができるのか。一つはシングルで子育てする親を正社員に登用するように法律で強制するという方法が考えられます。障害者雇用率を大企業に課しているように、シングルペアレンツ雇用枠を設定するというのも一つのやり方かもしれませんが、反発は大きいでしょう。

―― シングルマザー支援はどんな事業ですか?

坂東 起業支援です。静岡市、デジサーチ・アンド・アドバタイジング社と連携して2019年、「シングルマザー創業支援プログラム」を開始しました。私たちはつい既存の大企業で定年まで働くというライフスタイルを想定しがちですが、今までの枠組みの中ではなく、自分たちが働きやすい職場を自分たちの手で作ることもできます。今の社会で女性の前に立ち塞がるバリアと戦うだけでなく、自分の手で既存のしがらみのないブルーオーシャンを目指す方法も選択肢の一つとしてあると思います。