「文化芸術復興基金」の創立を国に働きかけ

 「いわば、友達プロジェクトです。本当に、本当に、心の底から感謝しています。感染して、死に至る危険性もあるわけです。それでも手を挙げてくれたのは、お金ではなく、命をかけてもいい、という思いで集まってくれた証し。思いやりや助け合い精神の素晴らしさも骨身にしみて、もしかしたら、本来の日本人はこうだったのではないのか、とも想像しました。それが、お金、お金と拝金主義に走ってしまった結果、現在のように、自分さえよければいい、と考える人が増えてしまったのではないか、と……」

 渡辺さんは、コロナ禍で甚大な被害を受けた文化芸術を守る運動「#We Need Culture」に深くかかわり、小劇場やミニシアター、ライブハウスなどの運営維持のために、国に「文化芸術復興基金」の創立を再三働きかけている。その必要性を広めようと、小泉今日子さんらに声をかけて、オンラインイベントも開催した。まだ、基金の創立は実現していないが、文化庁の「文化芸術活動の継続支援事業」による補助金の交付が第4次募集まで行われたのは、渡辺さんたちが先導する活動の功績も大きかったはずだ。

 「小劇場やミニシアター、ライブハウスなどを運営する知人や友人が、口々に『このままだったら仕事を辞めて田舎に帰るしかない』などと口にしているのを聞いて、なんとか力になりたいと思ったんです。それで、演劇、音楽、映画の各業界の代表者を決めて、2020年5月に初めて国に直接要望書を出し、私自身、すでに3度、永田町に要請しに行っています」