修士論文のテーマが、その後の仕事にも生きている

―― 日本でMBAを取るときに英語力は必須でしたか?

松山 授業はすべて日本語でした。受講者は英語が得意ではない人も多いようでした。ただ2年生のとき、一学期の3カ月間だけ提携している海外の大学院へ交換留学ができたので、私はロンドンのビジネススクールへ行くことになったのですが、そのときは当然英語を使いました。逆に欧米の学校から慶応に来た外国人の学生とディスカッションする授業もあったのですが、英語ができる人ではないと受講が難しかったかもしれません。

―― 修士論文はどんなテーマで?

松山 当時、外資系の小売業が日本に参入して何年かたった時期だったので、それらのブランドが日本に根付くには? 根付くブランドと根付かないブランドの違いは? というテーマで論文を書きたいと思いました。実際に企業に取材したいと考え、「慶応大学の大学院に通っている学生なのですが……」とアポイントを入れると、結構会ってくださる方が多くて大変ありがたかったです。結論から言ってしまうと、ブランドを最初から日本に合わせて変えてから参入したところは失敗が多い。単純に最初からローカライズしてしまうと日本のブランドとの差別化ができなくなってしまうからです。「アメリカから来た、新しい○○というコンセプトを持ったブランド」などというメッセージは伝えた上で、いかに日本市場に合わせて早く修正していくことが大事か、ということはそのときに学んだことで、今の仕事にも生きています。

―― 外資系金融出身でMBAホルダー。再就職は困らなかったのでは?

松山 そうでもないんです。今の時代は「年齢より何を経験してきたか」が重視されつつありますが、当時はまだ年齢で切られてしまうことがあったことと、「MBAを取った女性は使いづらいのでは?」と思われたようで。自分ではMBAをひけらかすつもりはまったくなかったのですが(苦笑)。

 小売業で事業に関わりたいという希望はありましたが、大学院で学んだといっても仕事では未経験。あくまで経験的に強みとなるのは財務分析や取材経験なので「数字関係だったらお役に立てるかもしれません」という気持ちで、転職活動に臨みました。