新型コロナによって多くの人がこれまでになく長い時間を自宅とその周辺で過ごしました。自分が暮らす地域がどんなところなのか、あらためて意識が向いた人も多いでしょう。折しも令和に入って各地を襲う水害やスーパー台風、近未来の発生が懸念されている巨大地震、単身高齢者の急増……。「自助」と「公助」の限界を救う「共助」はどこに求めればいいのか。地域コミュニティーが直面する現状と、新しい共助コミュニティーの形を、地域コンサルタントの水津陽子さんに聞きました。

―― 2019年の台風19号で被害を受けた武蔵小杉のタワーマンションで、復旧までにマンション内コミュニティーがいかに機能したかを取材されたそうですね。また、2016年熊本地震の際の、行政の災害対応と地域の共助についても取材されています。

 令和に入ってから特に「助け合い」が注目を集めることが増えました。菅義偉首相は政策理念として「自助・共助・公助」を掲げていますが、特に災害時などは、自助には限界があるし、公助はあくまで「側面支援」。すると残りを埋める共助はどこが担うのかという話になります。

水津陽子さん(以下、敬称略) 震災など災害があるたびに、人と人のつながりによって助け合う「共助」への意識は大きく高まるんです。阪神・淡路大震災のとき、がれきの下から警察や消防、自衛隊など「公助」によって救助された人は約8000人、一方で近隣住民や家族など「共助」によって救助された人は約2万7000人だったことは知られています。

 今回のコロナ禍でも、あちこちの地域で助け合いの活動が行われていますし、助け合いのある社会が必要だと考える人が増えています。しかもコロナによるテレワークの増加で、多くの人が自分の住む地域に「戻って」きました。助け合いの基盤となるコミュニティーについて、あらためて意識した人は少なくないでしょう。

水津陽子<br>地域活性化コンサルタント、経営コンサルタント。フォーティR&C代表。
水津陽子
地域活性化コンサルタント、経営コンサルタント。フォーティR&C代表。
島根県出身。地域資源を活用した地域ブランドづくり、観光振興、協働推進など地域活性化・まちづくりに関するコンサルティング、調査研究、講演、執筆活動を行う。近著は『こうして地域のリスクに備える! 令和・アフターコロナの自治会・町内会運営ガイドブック』(実業之日本社)

共助から放置されかねない都市のマンション住民

水津 現在、一般的な地域の共助の担い手というと、地域の自治会や町内会になるでしょう。例えば大規模災害などでは、自治体などと連携して動くケースが多いです。

 ところが、特に大都市圏では自治会や町内会への加入率が低く、東京都の場合は、5割程度といわれています。特に加入率が低いのがマンションなどの共同住宅です。昨今はオートロックのマンションも多く、住民に自治会への加入を働きかけることすら難しくなっています。

―― マンションにはだいたい管理組合がありますが、そこが共助の受け皿にはならないのですか。

水津 管理組合はあくまでマンションのハード面の管理が目的ですし、分譲マンションは居住者と所有者が違うことも多く、必ずしも住んでいる人のコミュニティーではありません。さらに賃貸マンションだと管理組合もありません。

 今もし東京に大地震が起きたとして、都内の避難所には住民の2割しか収容できません。さらにコロナ下だと3密回避で収容人数がその半分以下とされるので、1割の住民しか収容できません。住民の大半が在宅避難になることは明らかですが、マンション住民は特にその可能性が高いのです。

 在宅避難の場合、自治体で安否確認や被災者・避難者の把握もどこまでできるか。熊本地震では最後まで避難所以外の避難者の数は把握できませんでした。

 共助のネットワークから漏れてしまうと、災害救援物資はどこにどう届くのか、さまざまな情報や支援はどこに行けば得られるか、どうすれば分かるでしょうか。膨大な人々が放置され、孤立してしまうことが懸念されています