コロナショックは人々の価値観に大きな影響を与えました。生活の仕方や働き方も様変わりし、これからの時代をどう自分らしく生きるかは、大きな課題です。新時代を幸せに過ごしていくために、今意識すべきこと、やるべきこととは? 幸福学の第一人者、前野隆司さんに伺いました。

前野隆司
慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所長
まえの・たかし/1986年に東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了し、キヤノンに入社。1993年に工学博士学位を取得。慶応義塾大学理工学部専任講師、助教授、教授を経て2008年より現職。「みんなで幸せでい続ける経営」を大企業が実践するために設立された「みんなで幸せでい続ける経営研究会」を運営。

コロナを境に幸福度が上がった人は4割

―― 新型コロナを境に人々の幸福度の感じ方には変化があったのでしょうか。

前野隆司さん(以下、敬称略) 私が運営している「みんなで幸せでい続ける経営研究会」で、研究内外の市民473人を対象にゴールデンウイーク前後にアンケートを取ったのですが、幸福度が下がったと感じる人が2割、変わらないと感じる人が4割。そしてなんと上がったと感じた人が4割いました。

慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所長 前野隆司さん「緊急事態宣言発令後、幸福度が上がったと感じた人が4割いました」
慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所長 前野隆司さん「緊急事態宣言発令後、幸福度が上がったと感じた人が4割いました」

―― 大きな変化にさらされ、感染への恐れもある中で、「幸福度」が上がったと感じた人がそんなにいるとは驚きです。

前野 アンケート対象者の多くが大企業に勤める人だったので、結果に偏りはあるかもしれませんが、それでも私たちの想像をはるかに超えた数値でした。「無駄な会議が減った」「通勤時間が減った」「家族と過ごす時間が増えた」などの理由が多かったですね。

 日本人は真面目だから、「実はハッピー」なんて不謹慎なことを言えず顕在化してなかったんでしょうね。でも実際には、この変化を前向きに捉えている人も一定数いるようです。