終身雇用が当たり前の時代が終わり、会社員以外の多様な働き方も選ばれるようになった今、老後資金は年金や退職金だけに頼れなくなっています。「コロナ禍を経て、より多くの人が豊かな老後へ向けて自分自身でどう備えていくかを強く意識するようになった」と話すのは、全自動の資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」を提供する、ウェルスナビ代表取締役CEOの柴山和久さんです。私たちが直面している社会構造の変化と資産運用の必要性について話を聞きました。

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柴山和久<br>ウェルスナビ 代表取締役CEO
柴山和久
ウェルスナビ 代表取締役CEO
東京大学法学部、米ハーバード・ロー・スクール、INSEAD卒業。2000年より9年間、日英の財務省で予算、税制、金融、国際交渉に従事。その後、マッキンゼーでは、ウォール街に本拠を置く機関投資家を1年半サポートし、10兆円規模のリスク管理と資産運用に携わる。次世代の金融インフラを構築したいという思いから、15年4月にウェルスナビを創業。16年、世界水準の資産運用を自動化した「ウェルスナビ」をリリースした。著書に『これからの投資の思考法』(ダイヤモンド社)。

「自ら老後に備える」意識がコロナで加速

―― 昨年来のコロナ禍によって私たちの暮らしが大きく変わる中、将来の備えに対する人々の意識や行動にも何か変化が見られたのでしょうか。

柴山和久さん(以下、敬称略) 大きく2回、変化があったと思っています。私たちが提供している資産運用サービス「ウェルスナビ」は、2016年のサービス開始以来、預かり資産は右肩上がりで推移してきました。2019年の夏に金融庁のいわゆる「老後2000万円問題」報告書がメディアで大きく報道されたことで、自分自身でどう老後に備えるべきかという関心が高まったと思いますが、ウェルスナビのユーザーはそれ以前から増え続けていました。

 老後2000万円問題によって、資産運用で老後に備える動きがさらに広がったわけですが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、そのような意識の変化が一瞬止まりました。それは恐らく、未知のウイルスの脅威に直面して、将来のことよりもまず自分や家族の健康、生活の変化といった足元のことが大事だと考えた方が多かったからではないかと思います。これが最初の変化です。

 そして、コロナがどういうものかが少しずつ分かってきて、長いトンネルの出口も見えてくるようになると、もう一度、将来の老後に目を向ける方が増えてきました。そのときには、コロナ以前よりもさらに多くの方が、「自分自身でどう備えていくべきなのか」を考えるようになったのではないかと思っています。コロナで一旦止まった流れが再び動き出したときには、以前よりも加速していた、という感じです。

―― それはなぜでしょうか。