社会インフラとしての資産運用サービスを提供したい

柴山 どちらかというと、私たちが備えの意識を喚起しようと思って起業したわけではなく、意識を持ち始めた方が気軽に安心して利用できるサービスを提供したいという思いが大きかったですね。

 終身雇用は維持されず、退職金や年金といった仕組みに頼れない。そう考えたとしても、課題を解決するための選択肢がなければ、不安に陥るだけですよね。日本社会の構造の変化に気がついて、自分自身の行動を変えていきたいと思ったときに、資産が多いか少ないかとか、投資の経験や金融の知識があるかどうかに関係なく、誰もが安心して利用できる、いわば社会インフラとしての資産運用サービスを提供したい。それが、創業したときの強い思いです。

 ウェルスナビはコロナ禍の最中である2020年12月に東証マザーズに上場しました。2月から3月にかけてのコロナショックの際には、相場の急落による不安を感じている利用者の方へのサポートにリソースを集中。その結果、多くの方がコロナ禍でも資産運用を継続し、ウェルスナビの預かり資産もお客様の数も伸び、事業が順調に成長したため、予定通り上場することができました。

 上場の時点で、利用者は既に20万人を超え、預かり資産は3200億円に達していました。創業してまだ5年の、未上場の会社が提供しているスマホアプリのサービスで、20万人の方が平均140万円の資産を運用している。そのこと自体が今までの日本では考えられなかったことだと思いますし、いかに多くの方々が、働きながら資産運用していくことの必要性を強く感じていらっしゃるかの表れだと思っています。

―― (下)では、働く世代が考えるべき資産運用との付き合い方についてお話を聞きます。

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テクノロジーの力が「資産運用の民主化」を可能にした

取材・文/谷口絵美(日経ARIA編集部) 写真/斉藤順子