テレビドラマ『すいか』や『野ブタ。をプロデュース』(原作・白岩玄)など、寡作ながら見る人の心にいつまでも残る物語を生み出す夫婦脚本家・小説家の木皿泉さん。妻の妻鹿(めが)年季子さんにお話を伺うインタビューの最終回です。夫の和泉務さんは50代のときに発症した脳出血の後遺症で半身まひとなり、妻鹿さんは仕事をしながら和泉さんの生活のサポートもしています。夫の大病と介護から得た実感は、夫婦関係や創作にどんな変化をもたらしたのでしょうか。

(1)二人で「上書き」し合うと脚本が面白くなった
(2)人との距離感の「当たり前」が分からず苦労
(3)介護経験が「外に向かう物語」を書かせた ←今回はココ

脳出血で半身まひになった夫は電動車椅子で生活

―― 木皿さんは夫婦で脚本や小説、エッセーを共同執筆する一方で、私生活では妻鹿さんが、車椅子生活の和泉さんの介護をして15年になりますね。

木皿泉さん(以下、敬称略) トムちゃん(和泉さんのこと)が脳出血で倒れて手術をしたときは、先生に「1日の8割がベッドでの生活になるでしょう」と言われていました。左半身にまひが残ったのですが、体のバランスを取る部分がまひしている感じだったんです。トムちゃんはもともと4歳のときにポリオ(小児まひ)にかかっていることもあって、通常よりも大変な状態で。リハビリ専門の病院にも4カ月くらい入院しましたが、他の患者さんほど回復できなかったですね。

―― ARIA世代では、親の介護を身近な問題として意識している人は多いですが、病気をきっかけにパートナーの介護をする可能性もあるわけですよね。今は日々、どのように和泉さんの生活のサポートをされているのでしょうか。

木皿 トムちゃんは電動車椅子で生活をしているので、基本的にはベッドから車椅子に移乗させることですね。体が大きくて私一人の力では移乗できないので、寝室とお風呂にリフトを入れています。

 うちの場合、私が会社に行ったりしているわけではないので、毎日一緒の生活で、介護をしているという区切りがあまりないんです。移乗も慣れてしまえば2、3分のことですし。

 食事も、料理を細かく切って右手が届くところに置けば今は自分で食べられるので、私は見守っているだけです。病気の直後は体がぐにゃぐにゃでしたが、今は日中は長時間車椅子に座って、本を読んだり、原稿を書いたりもできます。だいぶ自分で体のバランスを取れるようになっているんですね。

―― そうはいっても、仕事をしながらの日々の介護、つらいと感じることはありませんか。

「仕事も含めて自宅で毎日一緒に生活しているので、介護しているという区切りがあまりないんです」
「仕事も含めて自宅で毎日一緒に生活しているので、介護しているという区切りがあまりないんです」