34歳の信金OLが下宿での共同生活を通して成長していく『すいか』や、高校生の人間関係や内面をリアルに描いた亀梨和也主演のヒット作『野ブタ。をプロデュース』など、唯一無二の物語が多くの人を引き付ける脚本家・小説家の木皿泉さん。夫婦二人による共同執筆ユニットです。妻の妻鹿(めが)年季子さんに、「木皿ドラマ」に通底する思いや、脳出血で半身まひになった夫・和泉務さんを介護しながらの仕事と暮らしについてお話を聞きました。全3回でお届けします。

(1)二人で「上書き」し合うと脚本が面白くなった ←今回はココ
(2)人との距離感の「当たり前」が分からず苦労
(3)介護経験が「外に向かう物語」を書かせた

―― 木皿さんは、夫婦の共同執筆による脚本家・小説家として活動していらっしゃいます。以前テレビで自宅に密着したドキュメンタリーを拝見しましたが、壁を埋め尽くす大量の蔵書と、お二人がとにかくたくさんお話をしていた姿が印象的でした。

木皿泉さん(以下、敬称略) ドラマというのは、自分たち主導で作ることはあまりなくて、テレビ局から「こういう感じでやりたい」という提案が来るところから始まることが多いんです。それで、「テーマどうする?」「どういう感じの世界にする?」といったことをプロデューサーと私たちで話し合います。

他人の手が入ると仕事に新鮮さがよみがえる

木皿 一緒に暮らすようになってから30年くらいたちますが、最初はお互いの書いたものに上書きしていくスタイルで、脚本は文字通り共同で書いていました。もともと私はラジオドラマ出身で、トムちゃん(夫の和泉務さん)はお笑いやバラエティーの構成作家。私が先行して書いたものにトムちゃんがお笑いの要素を入れてくれたりして、それが圧倒的に面白かったんですよ。

 筆が進まなくなるのって、自分が書いたものに飽きて、つまらなくなっちゃうからなんですね。でも他の人の手が入ると新鮮さがよみがえって、続きを書く意欲が湧いてきます。

―― 誰かと組んで新しい視点を取り入れるとやる気もクオリティーも上がるというのは、キャリアが長くなって仕事に慣れている私たちARIA世代にも当てはまりそうです。でも、脚本家のようなクリエーティブなお仕事の場合、書きたいものが一致しないなど、お二人の認識や方向性にずれが生じてもめたりすることはなかったのでしょうか。

「私は面倒くさがりで、自分の作品のDVDも見ないんですよ。でもテレビで再放送が流れていたりすると、立ったまま『これ面白いじゃん』って言いながらずっと見ちゃう。なんせ自分が書いているから、センスが合うんですよね(笑)」