ペアレント・スマート構想は世界へ広がる

 ティーナさんの提案に多くのスウェーデンの大企業が賛同して、人事部の人材開発ワークショップなどで取り上げられるようになりましたが、活動は同時に海外へと大きく広がっていきました。

 スウェーデン外務省の広報機関であるスウェーデン・インスティテュートが、2013年から2年間にわたって世界を巡り、スウェーデンのワークライフバランスを紹介する「ライフ・パズル」というイベントを実施しました。ティーナさんはそのイベントにパネリストの1人として参加、アジア、ヨーロッパのいろいろな国で講演しました。

 2013年には東京にある在日本スウェーデン大使館でのイベントにも出席。渡航先ではそれぞれ現地のメディアからも注目を浴び、ティーナさんはスウェーデンの育児環境を代表するエキスパートの1人として紹介されました。

 特にバルト海から東側のヨーロッパでは、スウェーデン式のワークライフバランスへの関心が高く、国連の機関、UNFPAの主催でベラルーシ(白ロシア)での講演に数回にわたり招聘(しょうへい)されました。エストニアで開催された60人の人事部長を集めたビジネス・プロフェッショナル・ウーマンというネットワークでもワークショップを担当したりと人気の講師として活躍しています。

在日本スウェーデン大使館でのイベントで講演するティーナさん
在日本スウェーデン大使館でのイベントで講演するティーナさん

 ティーナさんの今後の目標は国連のSDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)を遂げる一環として、ペアレント・スマートを推進していくことだそうです。

 「ペアレント・スマートな企業は人間の生活をよりサステイナブルにすることに役立つと思っています。人生が満ち足りたものである人は業績も高く、組織への忠誠心も厚くなります。企業にとっても個人にとっても良い、ウィンウィンの関係ができるので持続可能な社会の一部になれると信じています。経済学科を卒業した時は、私に人のためになる仕事なんてできるのかしらと思ったのですが、私なりのやり方で到達できる目標が立てられ、それに向かって頑張っていけるのでとてもうれしく思っています」

 ポジティブなパワーにあふれるティーナさん。これからもより多くの組織をペアレント・スマートで持続可能なものに変革していくでしょう。

取材・文/中妻美奈子 写真提供/ティーナ・ブルーノ