世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回はライターの古澤恭子さんが、「世界で最も幸福な国」上位のノルウェーの住まい事情に迫ります。
衣食住でお金をかけるところは断然「住」
世界で最も幸福な国ランキングで毎年トップを占める北欧の国々。ノルウェーは2017年にNo.1に輝きました。一人当たりのGDPや総所得も上位です。人口が少ない国であるにもかかわらず、国が抜群に豊かで国民の幸せ度が高い、そんなノルウェーに暮らすミドルエイジの女性たちはいったいどんな生活をしているのでしょう。彼女たちの意外にもシンプルで、素朴で、すてきな住まいと暮らし方を紹介したいと思います。
ヒュッゲな暮らしやインテリアなど、最近日本でも北欧の「ヒュッゲ」(心地よい)という言葉が使われるようになり、さまざまなライフスタイルが紹介されるようになりました。中でも北欧インテリアは世界的にも人気で、おしゃれなデザイン家具やシンプルで機能的なインテリア術は絶えず注目の的。
ノルウェーに10年近く暮らす筆者が感じるのは、この国の女性たちの住まいはそれぞれ本当にすてきで、居心地よくする工夫がされているということです。衣食住でいうなら「住」が最優先。もちろん個人差はありますが、一般的に衣に関してはブランド物よりファストファッションやスポーツウエア、食に関しては健康的で素朴な食事。つまり衣食にはあまりこだわりがないように見受けられるのですが、インテリアとなったら話は別です。誰しも目の色が変わり、時間とお金をかけて情熱と愛を注ぎ込むのです。
自分の住まいをとことん慈しみ、手間暇かけて自分流インテリアをつくり上げていくノルウェー女性のすてきな家と暮らしの例を紹介しましょう。
【今回のARIAさん①】リリアン・バンムハイムさん筆者の知人である、ノルウェーの雑誌『A-magasinet』の編集長リリアン・バンムハイムさん(48歳)。会社の最寄り駅からトラム(路面電車)に乗って約10分、オスロ市が見渡せる眺望のよい丘の閑静な住宅街に彼女の住まいはあります。ノルウェーではポピュラーな庭付き集合住宅(家族が1つの建物をシェアする)で、20年前に購入。1924年に建てられた雰囲気のある典型的な北欧住宅に、夫、息子と家族3人で暮らしています。
一番好きな場所はキッチンとリビング
「昨年(2018年)キッチンを改装したんです。以前のキッチンは20年もので、完全に使い古されていました。だからこそ、これから30年は使えるであろう、無垢(むく)材の、本物の職人によるキッチンが欲しかったんです」。ぜいたくに施したオーク材と大理石調のコンビネーションがスタイリッシュなアイランド式。シンク回りは、「Biri tapet」というノルウェーの伝統的な美術工芸を職人さんが丁寧にはめ込みました。洗練された雰囲気の中にハンドクラフトの温かさが感じられます。まさにドリームキッチン!
「キッチンは家のハートだと思うんです。料理は決してうまくはないけれど、ここで愛する家族に料理をしたり、毎朝高校生の息子にお弁当を作ったりするのが好きです。お弁当といっても、前夜の夕食の残りでシンプルにさくっと作るんですよ」
夕食の後は、お気に入りのリビングで映画を見たり、読書をしたりして過ごします。この時間がとてもリラックスできて好きなんだそうです。リビングに置いてある先祖伝来のチェストは推定1930年代のもの。自分の家族やルーツが感じられるものをインテリアに取り入れることが、くつろぎの空間をつくる鍵になっているのかもしれません。