世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回は、米国オレゴン州・ポートランド在住のライター東リカ さんが、DIY精神で全く新しい商品を生み出した女性たちの奮闘を伝えてくれます。

 「DIYの聖地」と呼ばれるポートランドは、アイデアを自らの手で形にするという文化が根付いた街。自分の欲しいものがないときには「作ってしまおう」と考える人が少なくありません。

 今回は、そんなポートランドのDIY精神を武器に起業し、「スイートホエイ(乳清、以下、ホエイ)から作るサステナブルな蒸留酒」や「思春期専用デオドラント」という新たな商品カテゴリーを生み出した2人の女性を紹介します。

チーズの副産物から作るおいしいお酒

 「ホエイ」とは、チーズを作る際に固形物と分離された副産物のこと。このホエイを主原料にした新しい蒸留酒「ホエイワード・スピリット(Wheyward Spirit)」を開発したのは、フードサイエンティストのエミリー・ダーチャックさんです。

自らが開発したホエイワード・スピリットを手にするエミリーさん(写真提供/Wheyward Spirit)
自らが開発したホエイワード・スピリットを手にするエミリーさん(写真提供/Wheyward Spirit)

 ホエイは、タンパク質や乳糖、カルシウム、ビタミンなどが豊富で、近年、優れた食品として注目されています。ところが実際は、まだまだ流通の仕組みなどが整備されておらず、米国で生み出されるホエイの半分以上が廃棄されています。しかも、廃棄をする際には栄養価の高さが仇(あだ)になり、処理しないまま捨てると有害な藻やバクテリアの大繁殖を促してしまうそうです。

 自然食・乳製品業界で働いていたエミリーさんは、地元の酪農家たちがホエイの処理に悩んでいることを知り、商品開発者としての経験を生かして新たな解決法を見つけたいと強く思うようになりました。そして、「ホエイを単に処理するだけではなく、価値のあるものとしてフードシステム内で活用する」というコンセプトから、ホエイをアップサイクル(※)する蒸留酒にたどりつきました。

※ 元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すこと