世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回はライターのmimiさんが、台湾で再出発をはかる女性たちについて伝えてくれます。

 自分の店を持つことは、台湾の多くの人々が抱く夢です。オーナーが作り上げた個性あふれるカフェやセンスのいい雑貨店を見つけるのも、台北街歩きの楽しみのひとつ。けれども、人気店が突然移転や休業をするのもまた「台北あるある」の現象です。

 この1年の間に、台北市内で長年女性オーナーが経営していたカフェと雑貨店がいくつも、場所や営業形態を変えました。いずれも数年にわたって人気のあったお店だったにもかかわらず、アクセスの良いロケーションから離れる決断をしたのはなぜ? 彼女たちの「再出発」の経緯と、新たに始まった日々について聞いてみました。

「好きなことを続ける」支えるのはキャリアと技術

 日中は女性支援のNPOでWEBデザイナーをしながら、夜や週末に自宅でカフェを営業し、フリーランスエディターの仕事もこなすEveさん。台北市内でカウンタースタイルのカフェ「漂鳥咖啡」を運営していました。もともとデザインやコピーライティングの仕事をしていたEveさんは、コーヒー好きが高じて勉強を重ねてカフェをオープン。ですが、2020年1月に閉店することを決めました。

 デザイナーやミュージシャン、近所の人々に6年間親しまれた「漂鳥咖啡」閉店の知らせには、多くのファンが名残を惜しんだそうです。

 「カフェの経営が年々難しくなり、デザインや編集の仕事の収入でなんとか補っていたの。自宅と店の往復も時間の面や体力面で負担が大きく、体調も良くない状態だったから、環境や生活スタイルを変える必要があると思いました」

 Eveさんの再出発は、新しい場所探しから。台北の静かな住宅街にアパートをみつけ、仕事場を兼ねた自宅で予約制のカフェ「漂鳥咖啡‧秘室 ー Wandervogel café. The hidden place.」を、漂鳥咖啡閉店からわずか半月で再スタートしました。

新しい予約制カフェは住宅街のアパート。コーヒー好きのEveさん(左)のコーヒーとケーキのファンは多い
新しい予約制カフェは住宅街のアパート。コーヒー好きのEveさん(左)のコーヒーとケーキのファンは多い
新しい予約制カフェは住宅街のアパート。コーヒー好きのEveさん(左)のコーヒーとケーキのファンは多い