世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回はフランス在住のライターが現地の記者たちがボランティアで運営する記者協会の活動と悩みを伝えてくれます。

 仕事をするうえで横のつながりをもって情報交換することは大切だ。しかし、独立して動く記者、とりわけ専門分野を持つ者にとって、身近に仲間がいるとは限らない。

 フランスには、旅行、農業、環境、科学、エネルギーなどの専門分野に特化した記者協会がある。いずれも非営利団体だが、日本のNPO法人とは違い、1901年の「アソシエーション法」というフランスの非営利団体法に基づいて、理事長をはじめ全員ボランティアが基本だ。

 活動目的は、会員の仕事の質の向上と親睦で、勉強会やプレスツアーを頻繁に企画する。しかし、役員になれば定期的な会合や企画でかなり時間を取られるのも事実。

 時間に追われる記者の仕事をしながら、さらにボランティアで同業者団体のために働く意義を、記者協会で役員として活動する2人の女性に聞いた。

さまざまなジャンルの「文化遺産」専門記者との交流の場

 ソフィ・ローランさん(55歳)は、カトリック系週刊誌「ル・ペルラン」(「巡礼者」の意味)のシニア・エディター。副編集長がいない同誌の編集部では、編集長に次ぐ役職だ。歴史と文化遺産についての記事を執筆し、同僚の原稿をチェックする。

 1998年から記者の仕事をしているソフィさんは、カトリック系の新聞「ラ・クロワ」(「十字架」の意味)に在籍後、日刊紙「ルモンド」が発行する雑誌「聖書の世界」で数年働き、2005年に今の雑誌に移った。

 9時に出社し、18時半〜19時に退社する。取材で地方に出向くこともある。外での取材に時間を取られるので、日曜日に原稿を書くこともまれではない。成人した2人の子どもは独立し、夫とパリで2人暮らしをしている。

 ソフィさんは、「文化遺産記者協会(AJP)」の理事長という顔も持つ。02年創立の団体で、当時からの会員だ。長年、理事長を補佐する事務局長を務めてきたが、6年前に前理事長が退いたとき、後を継いだ。

 この団体には記者の正会員95人、賛助会員(広報エージェントなど)45人、賛助団体42団体が加入している。フランスの記者協会としては平均的な規模だ。記事として扱う文化遺産には建築物が多いが、ワインなど農業遺産や美術工芸の専門家も会員にいる。

 「分野を同じくする同業者と知り合いたくて入会しました。入ってよかったのは友人ができたこと。10年ほど前、プレスツアーで一緒だった米国人記者と親友になりました。今は、理事会で一緒に活動しています」と、入会したメリットを語った。

改装したパリの名門ホテル「リュテシア」をAJPの会員と見学(右端がソフィさん)。プレスツアーなどさまざまなイベント企画、運営も理事の仕事だ
改装したパリの名門ホテル「リュテシア」をAJPの会員と見学(右端がソフィさん)。プレスツアーなどさまざまなイベント企画、運営も理事の仕事だ