世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回はライターの賀茂美則さんが、たくましく生き抜く1人の米国黒人女性の挑戦に迫ります。

49歳の大学院生で、9人の孫を持つおばあちゃん

 全米で、BLACK LIVES MATTERのプロテスト活動が続いています。黒人が受けている差別は、当然警官からの暴力だけでなく、日常生活や職場の中にも根深く残っています。今回は、逆境にも負けず、自分の道を切り開こうと奮闘する黒人女性のライフ・ストーリーを紹介します。

 彼女の名はマレッタ・マクドナルド。体格も立派ならしゃべり方もとてもパワフル。いつも冗談を言いながらも仲間を気遣う様子を見ていれば、リーダーの資質が十分あることが伝わってきます。

 ルイジアナ州立大学社会学部の大学院博士課程在籍(犯罪学専門)という肩書だけを聞けば、エリートに見えるかもしれません。しかし、彼女の歩んできた人生は波乱万丈(はらんばんじょう)でした。

 実は、マレッタは現在49歳で、子どもが4人、孫はなんと9人もいます。39歳のときには早くも「おばあちゃん」になっていたというから驚きです。

マレッタ・マクドナルドさん(左下)と、3人の息子と孫たち。他に娘と孫が2人も!
マレッタ・マクドナルドさん(左下)と、3人の息子と孫たち。他に娘と孫が2人も!

 「生まれはシカゴですが、母親に育児放棄され、ベビーシッターをしていた女性に13歳まで育てられました。その女性と2人でカリフォルニア州にいる母親の元へ引っ越し、しばらくは母と3人で暮らしていました」

 その街で知り合った男性と結婚し、18歳で長女を出産。その後、夫の家族が住む、彼の出身地のルイジアナ州に家族で転居したのですが、それからが彼女の苦難の日々となりました。