世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。インドネシアでは、貧困などの社会問題や災害が多く、常に助けを必要としている人がいるといいます。ライターの中野千恵子さんが、ボランティア活動を通じて人助けに取り組む2人のインドネシア女性について伝えてくれます。

 インドネシアの人口は約2.7億人、その9割がイスラム教徒の国。経済面も順調に成長しており、首都ジャカルタは活気に満ちています。しかし、依然として貧富の差があり、養護施設もたくさんあります。津波、地震などの災害も頻繁に起きています。そこで活躍しているのが民間のボランティア団体です。今回は、ボランティア活動を精力的に行う2人の女性に、パワーの源についてお話を聞きました。

困っている人の笑顔が見たいと始めたボランティア

 フィフィ・ムスタリカさんは50歳、南ジャカルタで夫と2人の子ども、実母と暮らしています。本職はインドネシア語の家庭教師ですが、「自分や自分の家族の幸せだけを考えて生きるのはエゴ。支援を必要としている人のために活動したい」と考えるようになり、2007年にボランティア団体「Komunitas Lebah」(ミツバチ・コミュニティー)を立ち上げ、リーダーとして約30人のメンバーを取りまとめながら支援活動をしています。グループの名前の由来は、「困っている人を助けるためにミツバチのように働きたいから」だといいます。

 活動内容は、社会から孤立した人々や地域への教育や健康面の支援で、具体的には、遠隔地での図書館の設立、学校の設立、トイレや浄水設備の設置、無料健康診断、救急車の寄付、孤児やストリートチルドレンへの断食月の教育実施、犠牲祭(※)での肉の配布などです。災害が起きたときは被災地での支援も行っています。

 フィフィさんはイスラム教徒で、活動内容の中には断食月や犠牲祭などイスラム教の行事に沿ったものもありますが、支援は人道的なものなので、相手の信仰は問わず、イスラム教徒であってもなくても同様に支援しています。

 活動範囲はジャカルタのあるジャワ島だけでなく、飛行機で2~3時間またはそれ以上かかるスマトラ島やスラウェシ島、マルク諸島など、他の島にまで及んでいます。

西ジャワ州で起きた鉄砲水の被災者から話を聞くフィフィさん(右)
西ジャワ州で起きた鉄砲水の被災者から話を聞くフィフィさん(右)
※犠牲祭/牛やヤギの命を神にささげ、その肉を分配するイスラム教の宗教行事の一つ。イスラム教には豊かな者が貧しい者に分け与える助け合いの教えがある。