世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回は、専門職に就き多忙な日々を過ごす2人の女性を、ライターの吉村美佳さんが取材しました。激務をこなす彼女たちを支えるのは家族でした。

 両親共に教員という家庭で育ったベティナ・ネーガーさんは現在49歳、2児の母であり、職業は医師。学生時代は、数学とラテン語が得意な優等生で、両方が必要な職業は何だろうと探したところ、「医師」という職業にたどり着きました。

 多才なベティナはもともとスポーツ好きで、山登りやスキー、テニスは得意中の得意。スポーツだけではありません。バイオリンを長年弾いていました。1900年代初頭にベルリンで製造された高級な楽器を所有しているのですが、時間的な余裕がないと、残念ながら今では手に取ることはありません。

 医師といってもいろいろありますが、彼女は麻酔科、救急医療の専門医で医長です。学生時代にはスポーツ医学に興味を持っていましたし、本人が極度の近眼であることから眼科医になることに気持ちが傾いたことも。そんな中、さまざまな人から影響を受け、最終的に救急救命を目指しました。

救急医療の現場で緊迫した日々を送るベティナ
救急医療の現場で緊迫した日々を送るベティナ

救急医療の仕事は眠っていても気が抜けない

 麻酔科という分野では、ささいなことが生死に影響を与えるので、特化した専門技術が不可欠です。集中治療室での仕事は生死に立ち向かうため、精神的にも肉体的にも過酷。

「仕事のことで頭の中がいっぱい。夜中に目が覚めたら、そのまま仕事のことばかり考えて眠れないこともあるの」

 仕事にのめり込みすぎないように先輩から助言を受けたこともあるのですが、私生活で、スッキリ仕事が頭から抜けるようでは、立派な仕事などできない、と彼女は思っています。