世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回は、フランスからワイン専門誌編集長のストーリーを伝えてもらいます。

「ワインとともに23年」編集長になるとは思っていなかった

 今回紹介するのは、フランス・ボルドーに本社を置くワイン雑誌『テール・ドゥ・ヴァン(Terre de Vins)』の編集長、シルヴィー・トネールさんだ。

 トネールさんは、1999年の同誌創刊以来、一貫して編集長を務めている。年6回の通常号と3回の特集号の発行、そして毎日更新されるWEBサイト運営のほか、ワインサロンをパリ、リヨン、ボルドーで年3回主催している。

 トネールさんは最初からワイン雑誌の編集者を目指したわけではなく、編集長になったのは、全くの偶然からだ。

シルヴィー・トネール編集長。ボルドー・プリムールのワインとともに
シルヴィー・トネール編集長。ボルドー・プリムールのワインとともに

 フランス南西部モンペリエ生まれで、モンペリエ大学卒業後、地元広告代理店に営業職として就職。産休から戻った先輩女性が突然解雇されたことに反発し、自身も辞職。解雇された女性と一緒に広告と研修の会社を開業。その後客先の不払いが原因で会社を閉め、出産後に方向転換を決意した。

 土との関係を持ってテロワール(※)に生きる人たちとともに働きたいと、97年にフランス南西部ラングドック地方のペイドック・ワイン生産者組合に就職。マーケティング・コミュニケーション部門の立ち上げを担当し、香港でのワインエキスポなど、国際的な仕事も経験した。

 翌98年に彼女の人生は一変する。サプライヤーの一社であるオクシタニー地方圏を中心とする地方新聞社ミディ・リーブル社の役員、フィリップ・ベルジュレ氏に突然呼び出されたのだ。

※ブドウ畑を取り巻く自然環境要因のことで、特定の地域、地区、固有のブドウ畑から造られるワインは特有の個性を表すという考え方。