世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。ライターのバレーラ由美子さんが、多くの女性が管理職として活躍する国ニカラグアから、子育て事情を伝えてくれます。働く女性の多くがシングルマザーなのだそうですよ。

 中央アメリカに位置するニカラグア共和国。世界経済フォーラムが公表した「ジェンダーギャップ指数」によると、2019年の時点でニカラグアはなんと5位、21年は12位にランキングされています。なぜニカラグアが? と、不思議に思った方も多いでしょう。

 理由は、12年に、いわゆる「フィフティフィフティ法」という法律が定められ、地方自治体の首長や地方議会、国会の議員の男女比を各50%にすることとなり、多くの女性が行政機関の管理職になったからです。数合わせがあったことは否めませんが、それ以前からニカラグアには女性の役職者はたくさんいます。一方、ニカラグアで働く女性の多くがシングルマザーで、それは役職者でも同じです。

 働くシングルマザーを支えるニカラグアの社会の仕組みは、意外と日本よりも整っているかもしれません。彼女らの働く環境について、1人は中小企業の社長、もう1人は自治県議会の議員である、2人のシングルマザーたちに話を聞きました。

子どもを1人で産み、母に預けて働くことは珍しくない

 メイケリン・トビーさんは46歳、「トビーズ・ハードウエア」という金物を扱う中小企業の社長です。男の子が一人いる未婚のシングルマザーです。2020年に父親が病死し、その後を継いでゼネラルマネージャーから社長になったばかりです。

父のハードウエア・ストアを継いで社長を務める、メイケリン・トビーさん
父のハードウエア・ストアを継いで社長を務める、メイケリン・トビーさん

 「もともと父のハードウエア・ストアを継ぐ気はありませんでした」というメイケリンさんは、ニカラグアの首都、マナグアの大学で土木工学を専攻し、最初の仕事は水道局のプロジェクトの倉庫係でした。地方都市の実家に里帰りしたとき、地元の市役所の求人に応募し、市役所の土木部で働くことになりました。31歳の時に同僚との間に子どもができましたが、子どもの父親はすでに別の女性に心が移っていたので、子どもは1人で育てると決心して産みました。

 市役所の仕事は、子どもの父親である同僚がいるせいで気まずく、産休中に裁判所の求人を見つけて転職しました。「新しい職場で、子どもを理由に仕事をおろそかにするわけにはいきませんから」と、約400km離れたマナグアに住む母親と姉に子どもを預けることにしました

 メイケリンさんの母は父と別れてマナグアで新たな人生を送っています。姉もシングルマザーで、母に子どもの世話をしてもらっています。遠くにいる自分の母親に育児をお願いする、こうした育児形態は、ニカラグアでは決して珍しくありません。