世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。今回は、フランスから、出産をきっかけに起業した女性経営者のストーリーを伝えてもらいます。
人生はプランを描いても思いがけないことが起こるもの。そのときに何を選ぶのかが、その後のキャリアもライフスタイルをも左右する。フランス、リヨンの街でコミュニケーション・マーケティング会社を経営するナタリー・コリオ・グロスハンさん(50歳)にはどんな転機が訪れたのだろうか。
フランス第3の都市であるリヨンは、パリから高速鉄道TGVで2時間のフランス中央東部に位置し、毎年12月8日前後に行われる「光の祭典」で世界的に有名だ。また15世紀に始まった絹織物産業や美食の街としても知られ、市内にミシュラン星付きレストランが21軒ある。そのうち3軒は日本人シェフのレストランだ。
リヨンの北、小高い丘の上のクロワ・ルス地区で、ナタリー・コリオ・グロスハンさんはコミュニケーション・マーケティング会社を経営している。
リヨン出身のナタリーさんは、ボルドーの有名グランゼコール(高度な職業専門知識を学ぶためのエリート養成高等教育・研究機関)の一つであるINSEEC U.でマーケティングを学んだ後リヨンに戻り、コンサルタントとして順調に社会人のスタートを切った。
産休を拒否され、起業を決意
ところが、彼女の転機は思いがけなくやってきた。29歳のときに2人目の子どもを妊娠し、当時勤めていた会社の社長に産休願を出すと、なんと拒否されたという。
「産休なんてとんでもない、君には働いてもらわないと」
この言葉に、妊娠4カ月だったナタリーさんは辞職して起業することを即座に決心したという。「自分の人生を会社に左右されるのは嫌だったのです」
当時、すでに6歳の長男の子育てをしながらフルタイムで働いていた彼女の決断に、彼女のパートナーは、「起業当初は採算が合わないかもしれないが、やればいい。助けてあげるよ」とすぐに賛成してくれた。