世界各国に住むライターが、現地に暮らすARIA世代の女性にインタビューをし、その国・地域ならではのキャリア設計、家族の形、趣味やトレンドなどを紹介する連載。ウィーン在住のバレンタ愛さんが、「好き」を仕事に、自分らしく働く女性たちについて伝えてくれます。

子供時代を過ごした日本での経験が全ての始まり

 ハンガリー・ブダペスト出身のユディット・チャーニさん(51歳)は、4~9歳までを日本で過ごしました。冷戦時代だったので、日本でロシア語の学校に通い、ロシア語、英語、日本語を習得。日本でできた友人たちから、自然の美しさ、尊敬し合うこと、日本文化の素晴らしさも学べたと彼女は話します。

 周りに日本語を話せる人がいなかったので、一流ブランドやラグジュアリーグッズなどの大人たちの買い物にも通訳として重宝されていました。「子どもの頃から高品質なものに触れる機会に恵まれ、大人たちの手助けをしていたことが自信につながりました」とユディットさん。

 その国際的な感覚や満ちあふれた自信は、ハンガリーに戻ってから周りの子供たちとのギャップに苦しむ原因にもなりました。しかし子ども時代の経験は、その後の彼女の人生に大きな影響を与え続けています。

ウィーン在住のユディット・チャーニさん。自分のセレクトした商品が並ぶ店内
ウィーン在住のユディット・チャーニさん。自分のセレクトした商品が並ぶ店内

キャリアを全て手放しウィーンへ移住

 その後、ユディットさんはブダペストで国際的な銀行や企業のマネジメント、マーケティング、PR業の仕事で責任あるポジションを歴任。また、自分で起業して大成功し、人生を楽しんでいました。2008年の経済危機をきっかけに、美容関係の仕事を始め、ヨーロッパ各国への出張が増えたことから、ハンガリーにいる意味を考え始めるようになりました。2014年、新しい一歩を踏み出す決意を固め、母と妹が既に移住していたオーストリア、ウィーンへ移住しました。

 移住をきっかけに、子どものころからやりたいと思っていたバレエやモデル業などに挑戦し始めました。それらを通し「自分らしく生きる」ことや「心の平和」を大切に、人生を楽しむことを改めて考えるようになったと彼女は語ります。